戦国BASARA

□愛情 for you
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快速電車は止まらないが、特急電車は止まる。
そんな中途半端な駅前に、元親が念願だったカフェを構えたのは三年前のことだ。
今では少ないながら固定客もついて、やっと食べていけるまでになった。
モーニングのラッシュもやっと過ぎた時分。お客はテーブル席に二組、カウンター席に一人という、ランチタイムまでのまったりとした時が店内を包む。
ここまで来るのに色々な苦労があつたなと、元親は珈琲を淹れながら染々と目を閉じる。
「なぁオーナー。最近はあの作家先生の顔を見かけないんだが、来ているのか?」
元親が淹れた珈琲を美味そうに啜りながら、カウンターに座る大柄の男が問うた。
名は徳川家康。近所に住む大学生だ。
元親の店から五軒先の中華屋で住み込みのアルバイトをしながら学内奨学金で大学に通っているという、まるで絵に描いたような清貧な学生だ。
初めて会ったときから意気投合し、家康は店にちょくちょく顔を出してくれるようになった。そして二人の間では、元親は珈琲や時には軽食を、家康は余った賄い品を提供するという協定が密かに結ばれている。
家康は混雑時を避けて来てくれるし、元親も相談に乗ってもらったり試作品の試食をしてもらったりと、なにかと助かっている。
大柄な見た目からはなかなか想像が出来ないが、細やかな気遣いの出来る好青年だ。
「最後に見たとき、なんか顔色が悪かったよな。見るからに虚弱そうだし、なんだか心配だ」

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