戦国BASARA

□風邪っぴきの恩返し
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鼻腔の奥から熱いものが垂れてくる感覚に政宗は慌ててティッシュで鼻元を押さえると、思い切りかんだ。
「あーあ、鼻の下真っ赤だな」
「うるせぇ。こっちだって好きで鼻垂らしてんじゃねぇんだよ」
からかってくる元親を睨めつけてから、政宗はもう一度豪快に鼻をかんだ。
二、三日前から急に、鼻が出るようになった。
月曜朝一の恒例行事である朝礼中も鼻水が止まらなくて、ひたすら鼻をかんでいた。
去年までは鼻炎でも花粉症でもなかった筈なのに、だ。
同居している小十郎が花粉症で、くしゃみや鼻づまりで苦しそうにしている様子を見るたび不憫に思いつつもどこか他人事だったが、今ならその苦しみが分かる。
他人事のように考えていた当時の自分を恨めしく思いながら、政宗はまた鼻をかんだ。
「花粉症か?」
「いーや!この鼻水は風邪だ。なんか熱っぽいし」
「俺らはいつでも待ってるぜ〜」
くぐもった複数の声が、背後から聞こえてきた。
「出たな、マスクマン」
「マンで一括りにするな。私は女だ」
鼻水を啜りながら、真ん中に立つかすがが不機嫌そうに唸った。
その脇を固める利家と慶次は目が痒いのか、充血した目をしきりにしばたたかせている。
「この鼻水もくしゃみも、絶対に風邪だ。俺は花粉症じゃない…っくしゅ!くしゅ!」
「怪しいな、伊達」
「そのくしゃみは絶対花粉症だって」
「認めちまえって」
そう言った三人は、マスクで口許は見えなかったが完全に目元が笑っていた。
バカにされたわけではなかったが、なんだか腹が立って仕方がなかった。

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