戦国BASARA

□お互い様
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高台にある畑に、やっと目当ての人影を見つけた。
襷をかけ粗末な着物を纏い、太陽の下で土にまみれて汗を流す小十郎の男臭い姿に目眩を覚えつつ、政宗は畑へと討ち入りを決めた。
「Hey.小十郎!」
どんなに愛情を注いでいる畑を触っていても、主の声には絶対に反応する小十郎である。
すぐさま面を上げ、土で汚れた顔を首に掛けた手拭いで拭う。
精悍な顔立ちが伝い落ちる汗で映え、男っ振りがますます上がっているようにさえ見える。
その様に、政宗はなかなか目が離せないでいた。
「政宗様?」
声を掛けたまま黙り込んでしまった主を怪訝に思ったのか、小十郎から声をかけてきた。それにはっとなった政宗は、慌てて居住まいを正す。
「手合わせしてもらおうと思って、よ。まだ、かかりそうか?」
「申し訳ありませぬ。切りの良いところまで終わらせてしまっても宜しいか?」
「of course.急に誘ったのはこっちだしよ」
背の低い草の上に腰を下ろし、政宗は畑仕事に精を出す小十郎を見つめた。
毎日の食卓に上ってくる野菜達の美味しさは、折り紙付である。小十郎が愛情と手間をかけて作った証だ。
しかし、戦場にいるときとも政務に就いているときとも違う、和んだような楽しんでいるような、そんな小十郎の表情を見ていると野菜相手にすら嫉妬してしまう自分がいる。
相手は野菜だ、と思うと形振り構っていない自分が情けないやら恥ずかしいやらで、自己嫌悪する政宗だった。
「政宗様」
一人頭を抱えていると畑にいるとばかり思っていた小十郎が、すぐ目の前に立っていた。
「わ、何だ終わったのか」
「ええ。お待たせしました」
そう言って、小十郎は傍らに腰を下ろすなり頭に巻いていた手拭いを外し、汗を拭った。
肥沃な土の匂いに混じり、小十郎の汗の臭いが政宗の嗅覚を刺激した。

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