戦国BASARA

□束の間願事
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訳もなく、目が覚めてしまった。
外はまだ暗くて、自分が然程眠っていないことを知る。
だが妙に目は冴えており、二度寝出来そうな状態ではなかった。
たまには、こんな日もあるかとまだぼんやりと霞む目を擦る小十郎だった。
同じ布団にくるまり、傍らでぐっすりと眠る主の姿に安堵し、小十郎は起こさないように細心の注意を払いながら、ずれた掛布を剥き出しの肩に掛け直した。
夜の光の下で見る政宗の顔は、昼間とはまた趣が変わる。
陰影がくっきりと浮かび上がるからだろう、類稀なる美貌がより際立って見えるからかもしれない。
だがこうして寝顔だけを取れば、まだ僅かにあどけなさが残る。
合戦時の、辣腕を振るう果敢な姿や軍議のときの真剣な姿を知る者も多々いるが、こんな無防備な竜の姿を拝める人間は、この日の本で自分だけだと自負している。
すっと、小十郎の目元が細まった
己にも部下にも厳格で律した姿勢を崩すことのない小十郎であるが、政宗と過ごしているときは無意識に心を解いてしまう。
たまに無自覚なときもあって、その度に正宗にからかわれていた。
政宗の滑らかな頬にかかる髪を、無骨な指先でそっと退かす。
起きる様子はなかった。

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