□With smile
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1月14日、今日は桜乃の誕生日。
桜乃と付き合いだしてから、初めて迎える桜乃の誕生日や。
プレゼントもめっちゃ悩んで決めたし、今日のシミュレーションも頭の中で何度もした。
絶対に失敗なんてできない、大事な日。
…そう思っていたのに。


「最悪や!くそ!よりによって、プレゼント忘れるとか…!」


待ち合わせに向かっていた途中、桜乃のプレゼントを忘れたことに気付いた俺は、一旦家に引き返した。
それからプレゼントを持って再び家を出たものの、約束の時間は迫っている。
今日は桜乃の誕生日、遅刻なんて絶対にするわけにはいかない。

(浪速のスピードスター、今こそ俺の実力を発揮する時やで!)

全身全霊で前へ、前へと走る。
もっと…もっと速く!
絶対に間に合わせるんや!

見えてきた待ち合わせ場所の時計台。すでに桜乃がいる。
時計台の時計を見ると、約束の時間まで1分切っている。
やけどもう目的地は目前や!間に合う…っ!


「さく…、うわっ!」

「! 謙也さんっ!?」


もう本当にあと数歩のところで、足がもつれてずさーっとコケてしまった。
桜乃の目の前で。
さ、最悪や…。
桜乃へのプレゼントが割れるものでも崩れるものでもなかったのが、不幸中の幸いか…。


「謙也さん、大丈夫ですか!?怪我は!?」

「…ああ、大丈夫や…、怪我はしてないで…」


心が重傷やけどな…。
桜乃の優しさが、むしろ傷にしみてくる。


「はあ…プレゼント家に忘れるし遅刻しそうになるしずっこけるし…最悪や…」

「え?」


ついポツリともらしてから、起き上がって、桜乃に向き直って、用意していたプレゼントを渡す。


「誕生日、おめでとう…桜乃。いろいろとボロボロでごめんな。…これも、包装が少し崩れちまったけど、中身は大丈夫やと思うで!壊れるもんやないし…!」


桜乃は少し驚いた顔をしたあと、そっと俺の手からそれを受け取った。


「ふふ、謙也さんてば…、これを忘れて取りに行っていたんですか?連絡してくれれば良かったのに。あんなに慌てて…」

「いや、せやって今日は…」

「プレゼントありがとうございます。すごく嬉しいです…」

「! 桜乃…」


大好きな君の誕生日。
絶対失敗したくなかった日なのに、最初から失敗ばかり。
それでも、君は笑ってくれるから。
つられて俺も笑顔になった。


【With smile】


(…よっしゃ!これから絶対挽回したるから!今日は、楽しもうな?)(はいっ!)


end

鈴華様、企画へのご参加ありがとうございました。
謙也は準備はきっちりするのに本番でどこか抜けちゃうタイプかな、っていう勝手なイメージで。でもとにかく一生懸命な子だと思ってます!きっと桜乃ちゃんを楽しませてくれます(^^)

2013.1.14

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