Signal〜合図〜
□01.
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私―――鈴木杏は、今年の春、ここ、『立海大附属中学校』に転校した。
中学3年という、最も楽しい時期に全く見知らぬ場所でスタートを切ったのだ。
いや、くわしくいえば、知り合いはいるが半年以上まえに挨拶をしたきりだ。
今は5月。
周りには友達というものもでき、それなりに楽しい毎日を送っていた。
その中でも、最も信頼できる友人が北乃菜都だ。
今ではもう親友ともいえるだろう。
菜都は女子テニス部部長である。
彼女のプレイスタイルはオールラウンダー。
ちなみに強さは全国区だ。
そして、私が1番苦手としているものは――――。
「きゃあああああああっ!!!!」
噂をしてみれば…。
嫌い……ではないが、極力近づかないようにしている。
なにより、面倒くさい。
なんの利益があるんだか。
…………あれ?
「なんかあの女子たち、杏のとこ向かってきてるよね?」
隣りにいた菜都がつぶやいた。
否定できない。
だって現在進行形で迫ってきている。
いや、確かにあの人たちの周りで騒いでいたはずなんだが。
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