放課後教室
□郵便物
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他愛ない話をし、母親が帰ってきたのを確認して威は帰っていった。
久しぶりに感じた安堵感に、胸がぽっと温かくなるのを感じて嬉しくなる。
「今日は機嫌いいわねぇ」
「そう?」
「ここのところご飯も食べてくれなかったし…」
「…ごめん」
母に理由を知らせてやりたかったが、聞けばまず卒倒するだろう、葉人は母に泣いて欲しくなかった。
「いいの、今日はしっかり食べてくれたから」
にこにこと笑う母は、年の割りには老けている方だと感じていた。父と別れ、女手ひとつで子供を育てて苦労しているからだろうか…と、ぼんやりと考えながら湯飲みを置く。
「お風呂入っちゃってくれる?」
「ん、わかった」
あの事があってから、裸になる風呂には苦手意識が付きまとった。
無防備で、誰かがどこかから見ているのではないかと言う妄想が頭から離れず、辺りをびくびくと見回しながら入るせいか疲れはててしまうからだった。
以前ほどではなかったが、久しぶりに体を湯船で伸ばすことができ、威との他愛ない日常の会話の効果に驚く。
「ここんとこ…冷たくして悪かったな……」
いきなり理由もわからず幼馴染みに避けられた威の事を思い、申し訳なくなってうなだれた。
「…人に話せたら……楽になれるのかな」
風呂上がりの気だるい体をベッドに横たえると、かさりと指は当たり、家に戻ってきた時にポストから受け取ったものがあったことを思い出しす。
「……何かの懸賞かな…」
あえて口に出してみたが、自身の耳にも嘘っぽく聞こえた。
「…」
何かの懸賞でも当たったのだろうと思い込みたくて出した言葉だったが、住所が書かれてないのを見た瞬間、そうではないと感じて悪寒に身を震わせた。
風呂で温まり、汗ばむくらいの体がさぁっと冷えて行き、手足が冷たくなる。
「…っ」
厳重にガムテープでくるまれた封筒をはさみで開け、軽く振ると掌にころりと肌色のものが転がり落ちた。