105短編

□birthdayA
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「はぁ〜暇だよい・・・」

マルコは1人モビーディック号の甲板で呟いた。

今日の主役は、今は邪魔らしい…。

街をプラプラして時間を潰そうとしたがこれといった興味を引く物もなく結局船に戻り船番をする事にしたが、この穏やかな島では争い事なんて起きそうもない。面倒はご免だが、暇のあまり敵でも来ないかと不謹慎な事を考えていた。


「マルコ…」
「なんだ…□□かい」


不意に自分を呼ぶ声に振り向けば金色の羽を広げ甲板に降り立った□□の姿。
何だとは何よ、寂しがっているかと思って折角来てあげたのにと、俺の反応の薄さから□□のご機嫌を損ねたみたいだ。
白ひげの我儘娘にも困ったものだ。悪かった、来てくれて嬉しいと淡々に言えば、冷たい男ねと拗ねた。


「もう終わったかよい?」
「ふふっ、まだよ。」
「・・・よい」


先ほどから時間つぶしをしているのには理由がある、この島唯一の酒場を貸し切って俺の誕生を祝ってくれるらしい。
時間つぶしも意外と難しいもので…、何もする事が見つからない俺はいつもより異常に長く感じる時間を1人過ごしていた。


「もう…する事ないよい」
「そうだと思ったわ…だからこれ…」
「んっ!?」


2人で前祝いしましょうと□□が出してきたのは、酒の入った一升瓶。聞けば酒場にあったから持って来たという事…持ってきた?男に全てを奢らす□□が金を持っていたのかい?と聞く暇もなく、皆には内緒よと□□はポンと蓋を抜いた。


「「かんぱ〜い(よ〜〜い)!!」」


いつもはこの量ぐらいで酔いはしないが…空っ腹に酒はマズかった…。2人は完全に出来上がってしまった。


「□□勝負だよいっっ!!」
「臨むところよ!!」


オヤジの事でどれだけ好きか言い合いになったり、どっちの蹴りが強いか樽を海に蹴り飛ばしたり…負けず嫌いの2人は子供じみた戦いを繰り広げていた。

*********
*****


「あ゛ぁー疲れたよいっっ!!」


もう、ダメ動けないわと横で倒れこむと□□の髪が風で舞った…。それを無意識に掴みクルクルと指に絡ませて遊んでいると、酔っているわねと□□の笑う声が聞こえた。

久しぶりに会った□□は魅力的になっていて、昔は抑えられていた気持ちは抑えられなくなってきている…。
どうしてあの時、あんな約束をしてしまったんだと後悔した。

他の男なんかに触れられたくない…俺の物にしたい…だが、□□は“オヤジの宝”そう簡単にはいかない…。


「マルコ…誰も見ていないわ」
「あぁ・・・」


振り向いた□□は俺の胸の中に潜り込んできたと思えば、お互いの口が触れるか触れないかの所で止まった。酔っている所為か□□の潤んだ瞳は俺誘う…。今だけと吸い込まれる様に俺は後少しの距離を縮め軽く□□の口に触れた。


「勿体ないわ…きっと忘れちゃう…」


あぁ…多分□□は忘れるだろう、酒を呑んだ次の日には何もかも忘れている。だから俺は言うんだ、愛していると…。

□□はウトウトしながら俺の耳元で歌いだす…カナリアの能力は俺を夢へと誘っていく…。

“happy birthday to you happy birthday dear marco happy birthday to you”




(マルコ迎えに…)
(サッチ?どうし…むぐっ!! (しぃーー!!) )
(珍しい…寝てんのか?)
(しばらく、2人をそっとしとこうぜ)

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