[Angel's wing]

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『すみません、勝手なこと言って。でも、天上界に戻ったら無理な話だし、私、土方さんと住んで友人と言ったらおこがましいかもしれないけど、前よりずっと近く感じた……

同じ時を生きるって大事なことだと思うんです。少しだけでも試してみませんか?』


きちんと伝えれば土方さんはわかってくれるはずと思ったけれど、そんな期待はすぐに打ち消された。


「悪いが、お呼びがかかっていて俺には時間がねえ。鍵はポストに入れておけばいいか?」


少し早口なのは本当に急いでるんだろう。それなら仕方ない……きちんと今までのお礼は伝えたかった。


『そうしてもらえると助かります。……今までお世話になりました。散歩したり色々楽しかったです。』


「俺の方こそ世話になった。それじゃあな。」


少し落ち着いた土方さんの声にほっとしつつも、急すぎる別れはどこか形式的になっていた。


『はい。それじゃあ。』


途切れた電話は孤独感を与えようとするけれど、土方さんが仕事に戻るならきっとまた会えるはずだと自分を納得させた。


向こうの家には誰もいない……


それはここにいたいという思いをさらに強くさせることになっていく。


一ケ月。二ケ月……何をする訳でもなく時間ばかりが過ぎ、陽が沈まない夏になった。


毎日の日課といえば木の下に花を手向けることだけで、ゆっくりとした時間が流れる。


規則正しい生活はできていたけれど、総司が生きていた頃のように何か目標をもってとはいかなくて。


やることを見つけて誤魔化しても心は満たされないことはもうわかっていたから、無理に忙しくすることもなかった。


もし、自然にまかせ何か見つけることができたらいいと思うことで心は穏やかにいられる。


車の音……荷物なんて頼んでないし、友人が来るなんてこともない。


玄関の戸を開けるとそこにいたのはタクシーで、女の子が車から降りてくると私の方に叫んだ。


「沖田さんの家?」


横柄な言い方は若いせいかな……17、8歳ってところ?


『そうだけど。』


それを聞いた彼女が支払を済ませると、タクシーは走りだし彼女が大股で玄関へ歩いてくる。


なんだか嫌な予感がする……


敵意のような眼差しは私が向けられたことのないくらい鋭くて、身震いしてしまいそうだった。


膝上20cmくらいのミニスカートからはすらりとした足が伸びスニーカーを履いていて、栗色のまっすぐな髪の毛が風にたなびく姿は勇ましさすらある。


私の前までくると、肩にかけていた大きなショルダーバックを足元に置き大きな瞳で睨みつけてきた。


このこは誰?整った顔立ちに見覚えはなく、知り合いの子供かと思ったけれど似てる人はいない。


『うちに何か?』


「おおありよ。偽善者ぶって人の人生めちゃくちゃにしてくれたわね!」


『いたっ……』


彼女に押されて私はしりもちをついた。尾てい骨に感じる痛みに顔をしかめながら、見上げた少女の顔は冷徹だった。


私の知らない所で何が起きてるのか……慌てる頭で答えを探しても見つかるはずがない。


彼女の中にそれはあるのだから──…


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