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『はぁ…肩ぱんぱん…整体いこう…』


私の休日は日頃の疲れを取ることから始まる。行きつけは駅前の整体院…いつものようにドアを開けた。


「おはようございます。」


きちんと会釈して挨拶してきたのは、中肉中背の好青年。思わず見とれてしまった…


『あの…井上先生は…?』

「井上先生はぎっくり腰で…」

『えっ、整体師なのにぎっくり腰!?』


思わずそう言うと“しまった”という表情をした彼。普通の人なら“体調不良”と言うだろう…


人がいいんだろうな…困った顔がかわいくて、くすっと私は笑った。


するとみるみる赤くなった彼…ネームプレートを見れば私の好きな薄桜鬼の“斎藤さん”と一緒。


居た堪れなくなったのか、彼は恥ずかしそうにベッドへ私を案内した。


いつもはベテランの井上先生一人。井上先生と二人きりでも気にならなかったけど…


この格好いい斎藤先生…というか、斎藤君の方がしっくりくる若い先生だとなんだか緊張する。


うつ伏せに寝てO型の部分に顔をつけると見えるのは床…顔さえ見えなければ斎藤君でもいつもと変わりない。


「どこが、辛いですか?」

『首と…肩です…』

「わかりました。」


そう言うと斎藤君は首筋を押した。


『わっ!!痛い!死ぬ!』


斎藤君は井上先生の2倍くらいの強さで、五寸釘を打ち込まれたような痛みが脳天まで響き、私は叫んだ。


「すっ、すまない…この位でいいだろうか?」

『それなら…大丈夫…』


明らかに弱くなった力にほっとすると、だんだんと揉みほぐされた体は血流がよくなり、ぽかぽかしてきて気持ちよくなってきた。


まどろむ私が考えるのは斎藤君のことだった。何気にさっきタメ口だった気がする…慌ててたのかなぁ…


「どうかしましたか?」

『へっ?』


思わずすっとんきょうな声を上げると“笑っていた”という斎藤君。一人で考え事して笑うなんて私かなり疲れてるな…


“なんでもないです”と答えると何事もなかったように斎藤君は肩を揉んでいった。


眠気が襲うくらいリラックスした私は、また斎藤君の事を考えていた。


右肩に三つボタンがついた丸首の白衣を着ていて、首は見た目よりがっしりしてたなぁ…


肩幅はそんなにないけど薄っぺらくもないし、八分袖から見える腕も男らしかった。


一瞬で見た目を分析してしまうのは、職業病かもしれない。


私は飲料メーカーに勤めていて、飲料品の容器やラベルのデザインや販売企画を担当している。


お客さんに商品を手に取ってもらうためには、第一印象が重要だから。


考えることすらおっくうになった私は、夢の中…



あっ…薄桜鬼の斎藤さんだぁ…えっ…なんで、裸?しかも手に牡丹の花とか…?


「……さん、お疲れさまでした。」


ばっと目を開ければそこには床…起き上がると斎藤君が私の荷物の入った籠を持っていた。


夢か…夢は記憶の整理っていうものね。まどろんでる時に斎藤君のボタンとか体の事を考えたから夢になっただけ。


そう…決して私は妄想したんじゃない…


自分にそう言い聞かせて、私はベッドから降りた。



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