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□あけおめ
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2012年1月1日 深夜0時過ぎ―
「ああ、名前か…あけおめ?なんだそれは…きちんとした日本語で言うべきではないか?」
『……………』
「何?一々気にしすぎ?そんなことはない。きちんとした言葉使いは大人として必要なことだ。」
『……………』
「喧嘩など吹っかけていない。ただ俺はそう思っているだけだ。」
『……ぅ……』
「何故、泣いているのだ?俺は怒っているわけではない。こんな時間に会える訳ないだろう。俺達はお互い実家に住んでいる。」
『……………』
「それとこれとは別の話だ。こんな時間に娘が外出したらご両親が心配してしまうではないか。」
『……………』
「…そっ、それは、俺も会いたいと思っている。だが…何?意気地なし?そんなことはない。」
『……………』
「好きじゃないと何故決めつける!元旦の昼に初詣に行く約束をしているではないか。何が不服なのだ!」
『………!!!』ツーツー
どういうことだ。こんな夜中に…俺は仕方なく着替えてコートを羽織ると歩いて15分程の名前の家に向かった。
こんな時間に家を訪れるなど、正月といえど非常識にも程がある。
しかし…あんな風に怒ったら名前は何をするか…確認の為に会いにいくしかない。
年が明けたからだろうか…いつもなら人通りの少ない住宅街の道も初詣に行く人がちらほら見うけられた。
名前の家の前に立つと明かりがついていた。まだ寝ていない様だが…インターホンを押すのはまずいだろう…ポケットから携帯を取り出した。
ブルル…ブルル…
震える携帯の液晶には彼女の名前…タイミングの良さに驚き心拍数が早くなった。
「どうした?」
『待ってて…はじめ!』
ブチッ…ツーツー
「何…」
ガチャ…1分もせず開いた玄関。そこには笑顔の名前…俺を見ると走ってきた。
「…なっ。どうしたんだ?」
俺の前まできた名前は止まることなく俺に抱きついた。
『やっぱりはじめ来てくれた!』
「やっぱりとは…?来るのがわかっていたのか?」
俺の問いにコクンと頷く名前…何がしたいんだ…
「大嫌い!!と恋人に叫ばれたら誰でも会いにくるだろう。」
『だってそう言わないとはじめ来てくれないと思ったから…』
「嘘だというのか?」
『信じたの?…なんで私がはじめに会いたいって言ったかわからないの?』
「何故…」
『だって会って言いたいから…』
そういうと俺の首に腕をまわし彼女の唇が俺のと重なった。チュッという音と共に唇が離れると俺は慌てて彼女の体を離した。
「なっ…何……っ…」
『お誕生日おめでとう。はじめ!』
そういうことか…名前を引き寄せその口を塞いだ。
(嘘をついたな?)
(一番最初に言いたかったの)
(おまえという奴は…チュッ)
(あっ…お父さん…)
END.