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□08.ドロップモーション
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ボタンがいくつか外された。制服を着ている時には感じない開放感が首元にあった…



沖田先輩の唇の動き…肌が感じたことのない感触に身震いした…



熱い湿度を感じた場所は吸われた感覚と痛み…



嫌っ…なんで…こんな目に…?



『…やっ…め…』



声は震えて小さな呟きにしかならない…沖田先輩がキスマークをつける音にかき消された…



腕に力を入れてもびくともしない…足を動かすけどスカートが変に捲れてるのか腿のあたりに裾があたってる気がする…



沖田先輩が一つキスマークをつけるたび、二人の体重がかかるテーブルが揺れギシッときしんだ…



“このまま…沖田先輩に…?”



そんな恐怖で頭がいっぱいになった。そんな私に聞こえたバタバタと近づく足音。



これで助かるかも…そう思った瞬間、沖田先輩の頭が離れた。



“バタン!!”



大きな音に体がビクッとした。掴まれていた腕が離されドンッという大きな音が聞こえた。



“誰が…?”



目をあけると壁に押し付けられた沖田先輩。その胸倉をつかみ、握りこぶしを振りかぶっている斎藤先輩の後姿が見えた。




『やめて!斎藤先輩!』




とっさに上体を起こし叫ぶと悔しそうに私を振り返った斎藤先輩。でも殴ったりしたら停学は間違いない…



そんなの嫌だから…



「このまま総司を許すのか?」



怒りを抑えられない斎藤先輩…でも止めたのは斎藤先輩の為。許すのとは違う…




でも沖田先輩をみるとさっきとは違い、苦しみと切なさとが混じったような顔をしていた。




私に言っていた言葉はからかってたんじゃない…本心だったんだ…




どうしてだろう…責める気になれない…




『もういいです…』




そういって俯くと、胸元があいていてブラが目に入った。慌てて胸元を押さえた。



「俺が傍にいる。おまえは…」




壁に押し付けたままの沖田先輩にそういう斎藤先輩は、私に背中を向けていて表情は見えない。



でも怒りとはちがうしっかりとした強さを感じる声だった。



斎藤先輩の言葉を聞いた沖田先輩は、胸倉を掴んでいた斎藤先輩の手を振りほどき部屋を出ていった。



ドアが静かに閉まり部屋は静寂に包まれた。こんな姿を斎藤先輩に見られた…悲しくて…胸がしめつけられた…



こんな姿見られたくない…早くボタンを留めないと…


でも焦れば焦るほど、手は小刻みに震えて上手くいかない…



「目を閉じていろ。俺がやる」



私の前に来るとそう言った斎藤先輩の声は落ち着いていた。私は安心してゆっくり目を閉じた。



斎藤先輩の指をブラウス越しに感じた。下からだんだんと留められていくボタン。一番上のボタンが留められると、肌が露出していない安心感。



もう大丈夫…目を開けた。そこには複雑そうな顔の斎藤先輩がいた。



「大丈夫か?泣きたいなら泣けばいい…」



私は泣けないんですよ…そう言おうとしたけど視界が歪んだ…



溢れたものが頬を伝う…



私が泣いてるの…?



確かめようと手を頬にあてる前に斎藤先輩の指が頬に触れた…



その指の動きと共に感じる濡れた感触…



「名前」



斎藤先輩の言った一言に驚いた…



私の下の名前…



それと同時に斎藤先輩に抱きしめられた。きつくまわされた腕の中で私は穏やかな気持ちだった…



ずっとそれを望んでいたような…



「やっと思い出した…おまえの涙を拭う約束を…」



その一言で色んな場面がフラッシュバックのように見えた…


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