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□03.ニュートンのゆりかご
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「沖田先輩!」
「総司!」
千鶴以外の声がして、その方向をみると斎藤先輩がいた。
「一君…そんな目で僕の事みないでくれる?この子気に入ったから、仲良くなろうとしてるだけなんだけど?」
沖田先輩の言葉を聞いた千鶴の顔が…どんどん曇っていく。
ああ…千鶴の好きな人は沖田先輩なんだ。
なんで…離してくれないの…?
『…っ……』
“離して”そういうだけなのに、言葉が出ない。
男の人に抱きしめられたのなんて初めてで、頭はパニック。
腕を振りほどこうにも、背中からぴったりとくっついていて、体を動かす事すらできない。
「僕の彼女にならない?」
そんな声が耳元で聞こえて…泣きそうな千鶴の顔が目に入った。
どうしてこんな事するの?
初めて会って“彼女に”なんて信じられない。そんな軽い人を千鶴は好きになったっていうの?
急に胸の圧迫が無くなった。それと同時に手を引っ張られ、私は斎藤先輩の背中の後にいた。
「一君こそ、手なんかつないじゃって。らしくないね?その子が好きなの?」
「雪村の友達に、失礼な事をするな。困っているではないか」
「そう?その割には、拒否してなかったけどね」
「総司。いい加減にしろ」
そんな会話がされてる間も、手は繋がれたまま…
彼氏がいた事なんてない私は、手を握られるのも初めて…
でも、沖田先輩に抱きしめられた時のような不安な感じはなくて…
握られた手から感じる体温とか、骨ばった感触とかが心地よくて…
その手を感じていたいと思った…