『Identity』

□common mallow
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『えっ…?…父さん…』


玄関を開けると、父が立っていた。土方さんじゃなかった安堵を感じる間もなく、嫌な汗がでた。




平助君と住んでる事はもちろん内緒…頭の固い父…まずい…焦りだけが、私を追いたてる。




「なんだ、その迷惑そうな顔は?家賃も払ってやってるのに」




そういって、中に入って来た。止めれない…私は、これから起きる事を考え唇をかんだ。




リビングに向かった父。そこで目にしたのは、平助君。




私も後に続くと、ソファから立ちあがり、きちんと自己紹介した平助君。




だけど、そんな平助君を無視して、私を怒鳴る父…




「これは、どういう事だ?こんな事の為に、マンションを用意したんじゃない!説明しろ!!名前!!!」



すごい剣幕でまくしたてる父。平助君も、地響きのような声に何も言えなくなってた。




「真希が、平助君の借りたシェアハウスに住むから、代わりにって…それで…」




恐る恐る、事実を話した…




だけど、父は不愉快そうに声を荒げた…




「社会人のお前が…こんな子供をたぶらかして、恥ずかしくないのか!?」




『……』




言われた言葉は酷かった。だけどいつもの癖で、逆らうのを諦めてしまった…




何を言っても、私の言う事など聞いてはくれない…言い返したら、また頭ごなしに怒鳴られるだけ…




「ちょっと、そんな言い方ねえんじゃねえの?」




父の性格を知らない、平助君。私をかばおうとしてくれた。



だけど、平助君の優しさに不安を感じた…




『へ、平助君…止めて…』



父の矛先が平助君に向いてしまう…そう思って声をかけたけど、もう遅かった。



「君は、人の家に住むような教育をされてきたのか?これは、親子の問題なんだ…君は出て行ってくれないか!!」



『と…父さん!!』



逆上している父に、止める言葉を見つけられなかった…




「俺、外いってくる…」




平助君は、悔しそうにそう言うと、掌をぎゅっと握り締めたまま、リビングから出て行った。




あまりに、急な出来事で私は混乱して動けなかった。




“バタン…”





玄関が閉まった音で、平助君が外に行ってしまった事に気付いた…




風邪ひいてるのに…





追いかけないと…





リビングに置いてあった携帯を持って、玄関に向かった。




父の事など、忘れていた。靴を履こうとして、腕を掴まれた。



「どこにいくつもりだ?」


『平助君、風邪ひいてるのに!!』



まだ微熱があるのに…こんな寒い夜に外にでたら…そう考えると、いてもたってもいられない…



「あんな奴ほうっておけ、話がある」



その言葉に、私の中で何かが切れた…



『何なの?今更父親面して!!平助君は、私にとって…




言おうとした言葉に驚いた…









≪家族≫






前に感じた気持ち…






一人じゃないっていう絶対的な安心感…






やっと、わかった…






土方さんと平助君への気持ちが違う理由が…





私は父の腕を振りほどき、外へ駆けだした…




エレベーターに行くと、すでに表示は1階。↓のボタンをおしたけど、動きの遅さに階段へ走った。




父に責められた平助君…




いつも私を助けてくれた…私が助けるべきだったのに…




父に怯えている場合じゃなかった…守らなきゃいけなかったのに…




自分の弱さが嫌になる…優しい平助君が心配だった…あんな酷い言われよう…




一階に下りて、ファミレスへと向かった。平助君が行くとしたら、そこしか考えられなかった。




ファミレスについたけど、平助君の姿はなかった。




不安を感じながら、走った私。ドクドクという心臓の音が聞こえた…




どこにいるの?…電話したけど出ない…駅に向かおうとした。





“ズキン…”私の胸は痛んだ。





『うっ…』





“……苦…しい…何で…?”




私は胸元を押さえ、しゃがみこんだ…




“大丈夫ですか?”知らない人の声が聞こえた…



私はそこで意識を手放した…


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