『Identity』

□common mallow
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『どうしたの…平助君?』


夕方帰ってきた平助君。いつもはバイトで帰ってこないのに…



「風邪引いた…だるくてさ…」



顔色が悪い…熱があるのかも…ソファに座らせ、熱をはかると38.9度…



『とりあえず寝た方がいいよ…』



「そうだな…」



そう言って部屋に行った平助君。とりあえずアイスノンを持っていき少ししてからお粥を作って持っていった。




「ごめんな…名前さん…」



だるそうにそう言う平助君…その声が小さくて弱々しかった。




だけどお粥を食べてくれた。食欲があってよかった。薬を飲んで平助君は静かに眠った。



私が寝る時に見に行くと汗をびっしょりかいていた平助君。起こして着替えを渡した。



「ありがとな、名前さん」



さっきより元気な声にほっとした。



『気にしないで…おやすみ…』




――――――――――――



次の日には、平助君の熱は大分下がってた。でもまだ、37度台…大学は休んだ平助君。




ご飯を食べては寝てをくり返した。夕方には熱も下がり、咳が残る位になってた。



「寝てばっかりで、つまんねーよ」



そう言って、夕飯の後テレビを一緒に見た。




私が、土方さんに嘘をついた日から、平助君は前の平助君に戻っていた。





優しくて…明るくて…





それが、本当の平助君かはわからない。ただ、私に心配をかけない様にそうしてるのかも…




でも、避けられるよりはいい…どこまでも、私は平助君に甘えてしまっていた。




“ピンポーン”




私と平助君の顔が、同時に強張った。私たちがいるのに、鳴ったインターホン。





…土方さん?





一瞬そんな考えが頭をよぎって…







心臓が“ドクン”と大きな音を立てた。







平助君は心配そうな顔で、私を見てた。




だけど、ドアの向こうにいる人を、無視する事もできない。






…私はゆっくり、立ちあがった。






“俺が出ようか?”そういう平助君に頭を振って、無言で玄関へと向かった。


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