『Identity』

□Solanum mammosum
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土方さんの顔をみればその近さに体が跳ねた。




そのまっすぐな薄紫の瞳から目をそらす事なんてできない…




早い鼓動を知られないように冷静を装った…




だけどさっき体が跳ねたことで全て伝わってしまったかもしれない…




「俺は仕事の為に生きようと思った。だが名前がいねえだけでまともに働く事すらできねえ…おまえが必要だ…」





私を支えに…必要としてくれて嬉しかった。それだけでいい…





私には雪村さんのような力はない。土方さんが会社からいなくなれば大勢の人が困る。





“私は土方さんとよりは戻さない”はっきりそう言おう。それが誤解されない…




だけど私が考えてる隙に土方さんの言葉が先に聞こえた…








「名前、愛してる」







迷いのない声…私を射抜くような瞳に心が掻き乱された。





誰にも言われた事のない言葉…





言われてしまえばずっと欲しかった一言だった…





それを愛してる人から言われた事に頭よりも心が反応した…





土方さんの指が私の頬をなぞる…そこには濡れた感触…





歪む視界の中の土方さんは優しくて…見ていられなかった…瞼を閉じ俯いた…




瞼を閉じなければ言ってしまいそうだった…





“私も愛してる”





絶対言ってはいけない言葉を飲み込んだ…





伝えたい言葉を飲み込む苦しさに頭がくらくらした…




暖まっていない部屋で私は温もりに包まれた…




私を抱きしめる腕…耳元で感じる土方さんの呼吸…




土方さん存在を直に感じて私の意識は土方さんに集中した…振りほどくなんてできない…





こんなに愛してるのに…どうして一緒になれないのだろう…





答えなど見つけられなかった…





土方さんは私の肩をつかみ優しく体を離した。




肩から手が離れたと思うと私の顎を上に向かせる土方さんの手…





その先を考え驚きに目を見開くと視線があった…




その瞬間…暖かい土方さんの唇を感じた…





それはゆっくりと優しく…絡みつくようなキス…




触れてしまえば心に嘘はつけなくて…





私はそのキスを受け入れてしまった…





離れている事なんかできない…




こんなに求めてしまう人をどうしたら拒否できるのか…




私にはわからなかった…


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