『Identity』

□Two alternatives (4-4)
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「12:00発の宮崎行き 片道 苗字名前様 大人一名様ですね」




『はい…』




大勢の人が行き交う空港内はいつも混雑していて今がいつなのかわからない感じがした…




搭乗券を受け取ると私は搭乗口へと向かった。仕事中のビジネスマン。どこかへ向かう家族連れ…




はっきりとした目的もなく飛行機に乗る人なんて私だけかも…




宮崎は母方のおばあちゃんが住んでいた所。母が入院してから少しの間、預けられていた記憶がある。




一人暮らしの祖母は優しい人だった…母が死んでから数年後におばあちゃんも亡くなったけど…





「いつでも、おいで…」



最後に別れる時そう言ってくれた。その後は父方の祖父母に面倒をみてもらった。だけど宮崎のおばあちゃんみたいに優しくなくて…




『宮崎のおばあちゃんとこに、いきたい』




って言って怒られたっけ…結局、子供の私がおばあちゃんに会いに行くことはなかった。




夜、お母さんが恋しくて泣いた時…宮崎のおばあちゃんは私を外に連れて行った。




そこには、宝石箱をひっくりかえした様な星空。いろんな色の星が見えた…




おばあちゃんは私の横にしゃがみ満天の星空をみながら話してくれた…




「名前ちゃん、夜になるとお母さんは星になって子供を見てるんだよ?だから、お空にはこんなにいっぱい星があるの…」




『グスッ……そうなの…?』



「そうだよ。ほらあのきらきらしてる星が見える?」




そういって空で一番輝いてる星を指差したおばあちゃん。




『うん…。あれがママなの?』




「そうだよ。名前ちゃんの事、見てるって。だから、寂しくないでしょ?」




その笑顔が優しくて星が本当にママだって思った。




『うん!名前さびしくない!!ママはおそらにいるもんね!!』




私は元気を取り戻して星を一緒にみてたっけ…今まですっかり忘れてた。




お母さんが死んでからはもう会えない母の事を考えると辛くて…昔の事を思い出す事なんてなかった…




今は頭が混乱していて何を考えるべきとか何をすべきとか…全然わからなかった。




ただ自分の気持ちの向く方向に身をまかせていた…


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