『Identity』

□Two alternatives (2-4)
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朝、目を覚ますと斎藤君の家だった。喉が痛い…風邪ひいちゃった…



『ごめんね…泊めてもらって』



既に起きていた斎藤君にいうと“携帯が何度も鳴っていたぞ”と言われ携帯を開いた。



そこには平助君からの着信とメールが何件もあった。それを見てどう連絡していいかわからなかった。



着信時間は最後が3時すぎ…剣道の試合があるから体を休めなきゃいけないのに心配させてしまった。



いつもは幸せを感じていた優しさが重く感じてしまう…私はなんて身勝手なんだろう…




『帰るね…じゃ、また来週…』



“送っていく”と斎藤君が言ってくれたけど断って一人で駅に向かった。




土曜の朝という事もあり電車は空いてた。入り口近くに座ると差し込む日差しが眩しい…




私の気持ちは沈む一方…




どうしたらいいのだろう…




どんな言葉を選んでも平助君を傷つける事しかできない…



駅につき部屋へ向かい歩いていた。…バックの中で携帯が鳴った。



平助君?そう思い確認したけど知らない番号だった…




『はい…?』



「真希だけど、今日家いる?」



『いるけど…急に何の用?』



「会って話す。後一時間位したら行くから」



『えっ…ちょ…ツーツー



電話は一方的に切れた。こんな時に会いたくない…



だけど真希の事だ…来るにきまってる…



結局2時間程して真希が来た。



ドアを開けると当然のようにリビングに進みソファに腰を下ろした。



「平助は?」



『剣道の遠征で明日帰ってくる…』



そう言って平助君と会う事を考えると不安になった…



「ふーん。ねぇ?そのネックレス平助から?」



『なんで?』



「だってお姉ちゃんそういうの興味ない人でしょ?平助お姉ちゃんの誕生日私に確認してきたし?」




相変わらずそういう所だけは目ざとい…余計な事は言いたくなかった。



「でも、その顔じゃ上手くいってないみたいね…」



黙ったままの私に楽しそうに言った。私達の話を真希にしたくない。苛立ちながらも話を進めた。



『用事があったんじゃないの?』



「彼氏と別れたからシェアハウスにいる意味なくなったの。平助と代わろうかと思って。でも平助いないんならね…」



そう言って帰ろうとする真希を呼び止めた。



『真希!私、仕事で12月に引っ越すから…ここで平助君と暮らしたら…』



「平助と別れるって事?へぇ、お姉ちゃんもやるじゃない」



『真希と一緒にしないでよ!』



私は思わず大きな声を出してしまった。彼氏を次から次へとかえる真希と私は違う…



軽い気持ちで平助君と付き合った訳じゃない…



でも自分の気持ちに気付いてしまったらどうしようもなかった。



「別に責めてないわよ。自分に正直に生きるだけでしょ?私だってそうよ。気持ちが他にいったら恋なんて終わり…」



そんな風にさらりという真希が今までとは別人に見えた。



自分の気持ちを一番に感じて別れを選んできたんだ…



彼氏と付き合う長さの問題じゃなく自分に正直に生きてきた真希…



私はそんな生き方をしてこなかった…真希が強かった理由がわかった…



自分に正直に生きる事は難しい…それでも自分を偽らずにいくには強さが必要だ…



“引っ越しする日が決まったら電話して”



そう言って真希は帰っていった。


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