『Identity』
□21.2nd October
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千鶴side
『雪村さん。土方さんの隣にいるんだったらちゃんと支えてあげてください。あんな顔させてたら隣にいる資格ないと思います』
苗字さんのあの言葉には驚いた。だけどすぐに怒りがこみ上げた。
土方さんの隣にいる資格がないのは苗字さん…あなた。
私は怒りがおさまらずお父様に電話した。
「お父様?千鶴です。土方さんの女が会社にいるの…なんとかできない?」
「はぁ…千鶴。そんなの、いちいち気にしてたら、やっていけないぞ?」
お父様は浮気ばかり…土方さんの肩を持つような言葉に腹がたった。
「…だって私はまだ妻じゃない!!なんにも手に入れてないんだから!!」
今のままじゃ土方さんの隣を苗字さんにとられてしまう…
「落ち着きなさい。なんとかっていってもな…どうして欲しいんだ?」
「経理の苗字さんを目の届かないところにやれればいいの…土方さんに内緒で…お願い。お父様…」
そう気弱な声をだせばお父様は必ず私のお願いを聞いてくれる…絶対…
「わかった…近藤さんに話をしてみるよ。だが、そう簡単にはいかないかもしれないぞ?わかったか千鶴?」
…そうこなくっちゃ!!
「ありがとう、お父様!!」
私は電話をきった。私が知らないところで会ってるなら会えなくすればいいだけ。
…さっきまでのいらいらは無くなった。
私は使えるものは何でも使う…
それは形ばかりの家族だったから使えた手段だったけど…