『Identity』

□16.2nd August
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斎藤君に、ハンカチを返してもらった。お互いあれから少しだけ打ち解けた気がする。



定時になり帰ろうとした時、斎藤君に呼び止められた。



「苗字、これを大会議室にもっていってくれないか?」



そう言って。封がされた茶封筒を渡された。



『大会議室って9階のですか?誰に渡せば?』



「とりあえず急ぎだ。行けばわかる」



そう言われ会議室に向かった。大会議室はワンフロアが一つの大きな会議室。



新人研修や入社試験とか大人数でつかう部屋がある。



定時を過ぎてからの会議なんてよほど重要な事なんだろうな…。封がしてある書類を届けるんだから。



9階についた。エレベーターを降りると違和感…



電気がついていない。日も沈んでいないし窓がいっぱいあるから明るいけど…



でも会議があるなら電気をつけとくはずなのに…



会議室の扉についている太い取っ手に手をかけ重い扉を開けた。



「失礼します。経理の苗字です」



私の呼び掛けに応える人はいなかった。



会議室の中は夕日に照らされてオレンジ一色だった。



騒然と並んでいる長机と椅子…



“大会議室っていったよね?”



聞き間違いしちゃったかな…一瞬不安になった。



何時からの会議か聞かなかったな。



時計をしてない私は会議室の時計を見ようと中に足を進めた。



すると急に腕を引かれた。










すぐにわかった…














煙草の香り…














土方さん…



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