『Identity』
□14.July
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梅雨が明けると一気に気温が上がった。
くせ毛の私の髪は下ろしているとうっとうしくなってきた。
お風呂上がりの平助君はドライヤーもかけずにテレビを見ていた。
『平助君ってドライヤーかけないの?』
「ほっといても乾くしめんどくさい…」
…それでもあんなにサラサラなんて羨ましい。
じーっと見ていたら平助君が私の方に顔を向けた。
「名前さんショートとか似合うんじゃね?短いと楽ちんだよ?」
『そうかな…』
ショートなんてしたことなかった。でも今年の夏は本当に暑くてドライヤーにもうんざりしていた。
次の休みの日、髪を切った。
どんどん切り落とされる髪。なんだか色んな気持ちも落ちてく気がした。肩に触れるものはなくった。
前髪を多めにしたら髪を下ろしてる時のような安心感があった。
びっくりする位、頭が軽くなった。これならデスクワークでも疲れにくいかも…
ショートになって多めの前髪の私はちょっと若く見えた。…これなら23に見える。
平助君驚くかな…そう思いながら部屋に戻った。
平助君は出かけていた。蒸し暑いリビングのエアコンをつけた。
一番暑い時間に出歩いて疲れちゃったな…エアコンの風があたるソファに横になった。
物音で目を覚ますとそこには平助君がいた。
『おかえり、平助君』
体を起こすと平助君はなんだか照れてた。
『どうしたの?』
「あっ、いやっ…その髪型すげー似合う!」
目も合わせずそういう平助君。かわいい…こんなに照れてるのにちゃんと言葉にしてくれる。
『ありがとう。これ頭がすごく軽いんだぁ』
そう言って頭を振ってみれば“すげーかわいい”と言われ私が照れてしまった。
社会人になってかわいいなんて言われた事なかったから…