『Identity』

□11.April
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入学式が終わり大学に通いはじめた平助君。私の会社の入社式も終わった。



一週間が過ぎ新人の研修が終わったようだ。



支店のビル内を案内され部署を紹介されながら歩く新人の子達。



経理部にも彼等はやってきた。今年の新人は10人程だった。



新人担当の総務課の部長が経理部の仕事内容を簡単に紹介していく。



私達も仕事を一旦止め新人の自己紹介を聞く。




“ドクン”




…どうして





…ここにいるの?







心臓が鷲掴みにされるような苦しさを憶えた。




新人の中にあの子を見つけた…




バレンタインの日に土方さんのマンションに入っていった女の子。




綺麗な黒髪をポニーテールにして零れるような笑顔と共に自己紹介した。



「営業配属の雪村千鶴です」



…営業


…土方さんの恋人で部下




その笑顔は幸せそうだった。全てが順調…そんな感じだった。



そう思うと私の気持ちがどんどん沈んでいくのがわかった…



土方さんの事は諦めたと思っていた…



ただその事実から目を反らしていただけだった。



彼女を見ただけで私の胸は張り裂けそうになっている…



土方さんへの気持ちは全然薄れていなかった…



会社にいれば仕事に追われ家に帰れば平助君がいてくれた。



土方さんの事を考えないようにするにはいい環境だった。



でも目の前には見たくない人が立っていた。



それだけであの場面に戻ったような気持ちになってしまった…



もう二カ月も経っているのに悲しみがこみあげた…




助けて…


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