『Identity』

□8.February
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一月の上旬は頻繁に土方さんと一緒にすごした。



私に向けられる視線。触れる体。囁かれる言葉…全てが愛しかった…



好きな人が自分を求めてくれる。土方さんが私を愛してくれるから私は自分が好きになった。



土方さんは父とは違う。そう思った…




でも本社出張にいってから土方さんの様子が変わった。



どこかイライラしていたし私と目を合わせてくれなくなった。



なにかを抱えているのはわかるけど私は踏み込めなかった。



それ位、土方さんは重く張りつめた雰囲気の中にいた。



一緒に過ごす時は土方さんから声が掛った時だけ…



そんな状態の土方さんが私に声を掛ける訳なかった。



それでも私が土方さんに視線を向けていると時々は声をかけてくれた。



でも明らかに一緒にいることは少なくなっていた。



二月に入ると仕事以外で一緒にいる事がなくなった。



私が土方さんに求め過ぎたのだろうか…依存しすぎたのな…



私は不安にかられた。一度も“好きだ”と言われてなかった。



大人の付き合いだったのかな…



私は恋していたけど土方さんは違っていたのかもしれない。



それでも“私の事どう思ってるんですか?”と聞けなかった。



…私は好きだから



たとえ土方さんが私の事を遊び相手と思っていても私は真剣だった。



土方さんの傍にいたい…その気持ちに変わりはなかった。



一度開いた心の扉を閉じたくなかった。



それは自分の力だけでは開かないと知っていたから…


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