『Identity』

□2.September
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ある日、会社にいくと事務の子たちが盛りあがっていた。聞く気はなかったけどその声は大きすぎていやでも耳に入った。




「本社の営業からうちに部長がくるんだって!!」


「仕事もできてかっこいいらしいよ?」


「ねーねーいくつ位の人なの?」




結婚相手を探している彼女達には重要かもしれないけど私には関係ない。着替えると自分の席に戻った。




――――――――――――




翌日私は寝坊した。昨日暑かったからビールを飲んだ。いつも飲む訳じゃないからそんなにお酒は強くない。




だけど時々飲みたくなる。飲み始めると結構飲んでしまう。なんだかんだいってストレス発散なのかもしれない。




飲んだせいか眠りが深くて携帯のアラームが聞こえなかった。走れば間に合う。急いで会社に向かった。




会社のビル沿いに走り左に曲がれば玄関。中に入ってエレベーターにむかって直進した。




左側に喫煙コーナーがあるのを忘れてた…



“バンッ ガチャガチャ…”



人とぶつかった。私が弾かれた形でその人はびくともしてない。



私のバックから携帯や財布がバラバラと飛び出した。



『すっ、すいません…』



慌てて自分の荷物をバックにしまった。



「大丈夫か?」



その低い声にゆっくりと顔を向けた。そこには薄紫色の瞳。



心配しているというよりいい大人が何故走っている?という眼差しだった。



『大丈夫です…失礼しました』



私は恥ずかしくなり頭を下げるとエレベーターに乗り込んだ。ボタンを押すと扉が閉まり動き出した。



私はふぅっと息をついてさっきの声を思い出した。



“本社の土方さんだ”



整った顔の印象だったけど瞳に釘付けになって顔はよくおぼえてなかった。


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