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□ほんとのキモチ
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だが俺達の仲は秘密だ。風紀委員が風紀を乱すなど許されん。
二年になった今も俺達のことは誰にも知られてないだろう。
クラスも別れたし総司のまわりには相変わらず女子がいる。腹立たしいことこの上ないが、仕方あるまい。
今はそんなことはどうでもいい。何故、総司は連絡してこない?俺がどれだけ心配しているかわかっているはずだろう。
結局、総司から返事がないまま放課後になってしまった。俺は南雲と校内を見回ってから部活に向かった。
そこには何食わぬ顔で練習する総司の姿があった。何故──…
◇◇ ◇◇ ◇◇
「ふぁぁ〜。眠いなぁ…一君ってこんなに朝早くから校門の所に立ってる訳?」
屋上からのぞけば背筋をピンと伸ばし風紀委員の腕章をつけた一君の後姿が見えた。
今日は僕達の記念日。二年になってからクラスが別れたから、学校で一君と会えるのは朝の校門と剣道の練習の時だけ。
一君を朝からずっと見るのもいいかな…なんて。一君が思ってるよりずっと、僕は君のことが好きだよ。
あの日まで自分の気持ちなんて気付いてなかった。僕は男だし、恋愛対象は女の子だって決めつけてた。
だけど、キスされて僕が求めてたのは一君だってわかったんだ。拒むどころか、絡まる舌に感じたことのない快感を憶えた。
女の子は嫌いじゃないけど夢中になれなかったのは、そういうことだったんだ。
いつも本心をみせず飄々としてる僕だけど、一君の前では自然体でいられる。余計な気を回さず何でも言えるんだ。
一君は“そうか”と“ああ”しか言わないけど、二人きりの時は僕を好きだっていう感情を隠そうとしないし、僕はそれを一身に受ける。
それが何より嬉しいけど…付き合いだしてまわりに人がいる時は僕の方を見ようともしない。それが不満だった。
前は女の子に敵意をむき出しにしてたのに…今じゃ僕が追いかけてるみたいじゃない。
だから、僕が朝から姿を見せなかったら一君はどうするか観察するんだ。
一年前の一君を思い出してほしいからね。HRが終わると僕の携帯が鳴った。一君だ…もちろん無視。
着信音が切れるとすぐにメールがきた。“具合が悪いのか?”本当にそっけない。一君らしいけど…
メールなんて誰も見ないんだから尋問みたいのは勘弁してよ。
何かないと一君メールくれないし…悔しいけどメール貰えるとちょっと嬉しい。今日はあと何通くるかな…
僕は屋上でごろんと横になった。朝、早かったから眠いな…秋の爽やかな風を感じながら目を閉じた。
ガヤガヤと声が聞こえて目を覚ませば、体育の時間らしくグラウンドを走らされてる生徒が見えた。
一君のクラスだ…こんなに大人数いても僕の目はすぐに一君を見つけ出す。
風をうけてなびく髪が綺麗だな…なんて眺めてると不意に一君が顔を僕の方に顔を向け、慌てて体を隠した。
以心伝心なんてことないよね…一君、目悪いし…
その後も、休み時間ごとに来るメールを楽しみに待ちながら僕は一日中屋上で過ごした。
職員室で僕の担任の原田先生と話してるのを見た…僕のこと聞いてるのかな…
授業をサボって一君を存分に見た僕は満足して、道場に行き練習に参加した。
すぐに一君もやってきた。冷静そうに見えたけど怒ってるよね?どうなるか…楽しみだな。
一君の練習の荒れぶり…ちょっといじめ過ぎたかな?
僕を見ると声もかけずに稽古を続ける一君は強い眼差し。そんな顔もいいね…そそられる。
部活が終わると他の部員は帰り、道場には僕達二人。いつもの一君になるかと思ったけど、苛立ちを僕にぶつけてきた。
「総司、何度も連絡したのに無視するとはどういうことだ。今日が何の日か分かってるのか?」
「もちろんだよ、だからこそ一君に思い出して欲しかったんだ。あの時の気持ちを…」
「俺は何も変わっていない。」
「そうかな。僕との仲を知られたくないんでしょ?」
「それは立場上だ!総司こそいつも女と一緒にいるではないか!」
そう言って唇を噛みしめる一君…妬いてたってこと?だから見ないようにしてたの?
「あはは…一君。僕にとって女の子は恋愛対象じゃない。つまり友達ってことだよ。それより朝も放課後も一君と一緒にいる南雲の方が問題だと思うけど…」
「それは問題ない!俺が好きなのは総司だ!!」
思ったより大きかった自分の声に驚いた一君は、恥ずかしそうに頬を染めた。
それがなんだかかわいくて僕は思わず一君を引き寄せキスをした。
これじゃ一年前と反対。でも、あの時と感じるものは同じ。
いつでも確かめようよ
キスは嘘をつかない
伝わるのは本当の気持ち──…
END→あとがき