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□03.ニュートンのゆりかご
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「練習はじめるぞ」


その掛け声で、みんな集合し始めた。斎藤先輩も手を離し、私から去っていく。



『斎藤先輩!』



思わず呼び止めてしまった。離された手がなんだか寂しくて…話した事もないけど声を掛けてしまった。



斎藤先輩は振り向き、私の方に体を向けた。他の部員はみんな集合してる…何か言わないと…



『ありがとうございました』



そういうと、“ああ”と短い返事が聞こえた。普段、ああと言われるとそっけなく感じる。



でも斎藤先輩の“ああ”は優しく感じた。



千鶴を見ると、なんだか悲しそうだった。沖田先輩が好きなのに、私を抱きしめる所なんて見たら…



私の顔なんかみたくないよね…



『千鶴。私、先に帰るね…』



「……」



千鶴は無言だった。私の方をみようともしない。それだけで、すごく沖田先輩を好きなのがわかる…



ちょっかい出してきたのは、沖田先輩…



でも、パニックで何も言えなかった私に、千鶴は怒ってるんだよね…



『ごめんね。千鶴…』



そう言うと、千鶴は目を見開いて、驚いたような顔で私を見た…



でも唇を噛み、私から顔をそらした。聞こえた声が、苦しそうで…



我慢できないという感じに震えていた…



「別に、謝ってほしくない…馬鹿にしないで」



千鶴の言葉とは思えなかった。幼稚園から一緒で、喧嘩なんかしたことなくて…



馬鹿にしたつもりなんてないのに…




でも、怒ってる千鶴に何も言えなかった…




帰るしかなかった…




千鶴の泣き顔は何度もみていた。だけど、今日は泣いてないのに、一番悲しそうな顔…




どうすればよかったのかな…




剣道場から離れるほど、千鶴の心からも離れてしまう気がした…


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