Novel

□二人の秘密
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人の秘密


「えっと……お疲れ様っ」

「わたくしも、お先させてもらいますわ」

「んじゃ、俺も〜。 後は頼むわな、椿」

榛葉さん、丹生、会長の三人はそう言い残すと、さっさと生徒会を出て行ってしまった。
……全く。

下校時間が迫った頃。
僕が今月の仕事を割り振ろうとした途端、みんなこれだ。
きっと、居残りを予想したからだろう。
何も今日中に割り振る必要は無いのだが、僕としては早い所自分の仕事を把握したい。
いつもの事なので今更気にしていないのだが……みんなには、もう少し生徒会の仕事に積極的になって欲しいとも思う。

ぽつんと一人になった生徒会室で、椅子に座ったまま、机の上にある山のような資料をじっと見つめた。
……仕方ない。 一人でやるしかないか。
こういうのには慣れているしな。
ふと窓の外を見ると、そこには真っ赤な空が広がっていた。
なんとか日が沈むまでには、終わらせたいが。 難しいだろうなぁ。

やれやれと小さくため息を吐くと、ほぼ同時にガラリッと生徒会室のドアが開いた。
顔を上げると、そこにあったのは無表情な彼女の姿。

「……? 会長達はどうしたんだ?」

無表情な彼女――浅雛は、不思議そうな口調で尋ねてきた。
あぁ、そういえば浅雛は先生に呼ばれたとかで、生徒会室を離れていたんだったな。

「会長達なら、先に帰った」

僕の返答を聞いた浅雛はそうか。 と呟くと、僕の隣にある自分の席へと向かった。

「浅雛も、もう帰っていいぞ。 下校時間が近いしな」

目の前の資料を分けながら当然の事のように彼女に言うと、その場に立ったままの彼女からは、意外な返事が返ってきたのだった。

「椿くんは?」

「……え?」

「椿くんは帰らないのか」

浅雛の方を見ると、彼女は顔色を変えぬまま僕を見下ろしていた。
帰りたいのは山々なんだが。

「僕は、全員の分の仕事を振り分けなければならないのでな。 もう少し残る事にする」

「他のみんなには、頼まなかったのか?」

「いや……。 みんな多分、早く帰りたかったのだろう。 僕も、下校時間ギリギリに言ってしまったしな」

するとどうだろう。
今まで無表情だった浅雛は少しだけ……。 ほんの少しだけだったが、眉を寄せ不服そうな表情をしたのだった。

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