Novel
□U
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運命の人 U
「あっ。 そういえば、デージーちゃん」
「何だ」
私とミモリンが、会長に頼まれた用事を済まそうと、職員室へ向かう廊下を歩いていた時の事である。
隣にいた彼女は、いつものふわふわとした笑顔を振り撒きながら、私に尋ねてきたのだった。
「デージーちゃん、昨日A組の安田くんに呼び出されてましたよね? あれって何だったんですか?」
……その事か。
私は顔をしかめながら、ミモリンの顔を見つめる。
あまり思い出したくもないのだが、変に隠す事でも無いしな。
「告白された」
小さく返答すると、ミモリンはまぁっ! と目を輝かせて、私の方にぐいと近づいた。
その華々しいオーラに圧され、思わず足を止めてしまう。
「それで! 何て答えたんですの!?」
「……D O S(ドブで 溺れて 死ね)」
即答だった。
あんな奴には興味などないのだから、当然だ。
すると彼女は残念そうな面持ちで、そうですか……とため息を吐くと、私から一歩離れる。
どうしてそんな顔をするのだろう? ミモリンには関係無いだろうに。
しかし彼女は、眉を下げながら小さく口を開くのだった。
「安田くん、この学年の中で1、2を争うイケメンなんですのよ。 それに成績優秀でスポーツ万能……。 デージーちゃんにはお似合いだと思いましたのに」
「大きなお世話だ」
それだけ言うと、さっさと歩き始める。
ミモリンはそんな私の後ろを慌ててついて来た。
今までにも男子に、好きだ。 付き合って下さい、と言われた事はあったが。
全て同じ返事を返してきた。
私は恋愛に興味が無い。
いや、興味が無いと言えば嘘になってしまうかもしれない。
実際の所、今まで本気で人を好きになった事が無いのだ。
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