Novel

□U
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周りの友達や女の子達は、この年頃になると必ず恋愛話に花を咲かす。
だが自分には話せる事は何も無い。
その事に少しだけ、寂しさを感じてしまう事もあった。

でも、こればっかりは自分ではどうしようも無いではないか。
無理に人を好きになるのも違うと思うし。
心から好きだと思える人と付き合いたいのは、当然の事だ。

「デージーちゃん、美人ですのに勿体ないですわ」

「……」

ミモリンの言葉を無視して無言で歩き続けると、ようやく職員室の前に着いた。
私達は先生からプリントを受け取ると、生徒会室へと戻るため再び廊下を歩き出す。

だがしばらく歩いた所で、隣を歩く彼女は突然沈黙を破り、口を開いたのだった。

「……デージーちゃんは、いつか素敵な“運命の人”に出会えると思うんです」

「またその話か」

「はい! さっきからずっと考えていたんですの。 デージーちゃんの運命の人はどんな方なのかしら…って」

ミモリンはふわり、と優しい笑顔を向ける。
彼女は本当に、私の事を気にかけてくれているんだな。

「……運命の人、か」

その言葉に小さく心臓が跳ねた。
そんな人が、いつか私の前に現れるのだろうか。
私が好きになって、相手も私の事を好きでいてくれて。
私も周りの女の子達のように恋をする日が、本当に来るのだろうか。

……信じられないな。
今の私には夢のような話だ。

すると、ミモリンはいたずらっぽく微笑んだ。

「案外、近くにいるかもしれませんよ?」

「それは無い。 ありえない」

私は低い声で答えると眉を寄せながら、ガラッと生徒会室の扉を開ける。


「あ、お帰り! デージーちゃん、ミモリン」

明るい声色で私達を迎えてくれたのは、榛葉さんだ。

「ただいま」

「ただいまですわ」

その時、ふと目に入った椿くんの顔が、やけに難しそうな表情をしているのに気づく。
それが何だか不思議と……気になったのだった。


Fin.


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