優しく、キスして

□3.天空の庭
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今日はお休み、ということで学校を見てまわることにした。

本当のこというと暇なだけ。

奈緒を誘おうかと思ったけど祓魔塾に関係するところもまわりたかったから誘わなかった。

あ・・・この前塾にいた犬だ。

あたしの方見てる・・・。


『どうしたの君迷子?』

「そんなわけないじゃないですか」

『しゃべったぁ!!』

「大きな声を出さないでください。アインス、ツヴァイ、ドライ♪」


目の前に突如現れた煙におどろいた。

煙の中から人影が見えた。


「こんにちは、麗奈」

『メ、メフィスト!』


あの犬ってメフィストの変身だったの?


「今日はいいお散歩日和ですね」

『そう、ですね』


確かに言われてみるとそうだ。

太陽光がさんさんと降り注いでいる。

・・・この人なんかたくらんでる。


『何のためにここで私を待ち伏せてたんですか?』

「いえ、待ち伏せていたなんてことはありません。
それよりせっかく会ったんですしお茶でもしませんか?」

『へ?』


お茶、ですか?いきなり何?


「いい和菓子のお店を知ってるんです。この学園の敷地内なんですけどね」

『和菓子・・・』


メフィストめ、私が和菓子が好きなこと覚えてたの?


「確か麗奈は和菓子が好きでしたよね」

『は、はい』

「では参りましょう!」


肩に腕をまわされ歩き始めた私。

そして私が持ってる鍵とは違う鍵を使ってドアを開けた。

お店の中に立っていた。

和がきいててこの学園の中にあるとは思えない店造りだった。

店主は知っていたかのように席に案内してくれた。

中では昔の話やおばあちゃんの話などをしながら奢ってもらったお団子を食べた。


『ごちそうさまでした』

「いえいえ。おっと帰りの鍵を忘れてきてしまいました。
少し歩きましょう」

『はい』


店の外に出ると一本の道が目の前に通っていた。

ただの道ではない、地上何百メートルといっていい高さのところにあった。


『こ、これは・・・』

「騎士団の中はこういう造りになっているんです。変わってるでしょ?」

『はい、とっても変わっています』


あんたもな!!


「下にあるあの道が見えますか?」

『あの浮いてる道ですか?』

「浮いてるわけじゃないですけどね。今からあそこに飛び降ります」

『はい。ってえぇ〜!?』


いや無理でしょ!だって落ちたら死んじゃうでしょ。


「いきますよ」

『うわっ!』


いきなりメフィストに足と胴を抱かれた。

これは女の子みんながあこがれるお姫様抱っこってやつか、こんな人にやられても嬉しくないけど。


『やぁぁー!!!』


地面に落ちる!っと思ったら着く直前にメフィストが傘を広げてなんとか無事着陸。


「スリル満点でしたね」

『ですね、って初めてだったんですか?』

「はい、こんなこと1人でやるわけ無いじゃないですか」


失敗していたらどうしてくれるんですか!

メフィストがゆっくり降ろしてくれた。


「おっとそういえば仕事が残っていたんでした。あのドアに向かって進めばきっと分かる場所に着きます。
では私はこれで」


き、消えた!?

いくら地上に近づいたからといってもここも結構高い場所にある。

そういえば私高所恐怖症だった・・・


『高っ・・・』


そのとき、


「麗奈さん?」

『ゆ、雪男くん!それに・・・』

「雪男、どうした?」


えっと何くんだっけ・・・

確かクラスにいたような。


「おぉ!お前雨宮麗奈!」

『は、はい』


名前、知ってるの?

でもおかしくないか。


『えっと、雪男くんその人は?クラスメイトだよね。
でも名前覚えてなくって・・・』

「あぁ彼は奥村燐。僕の双子の兄だよ」

『あっ!そうなんだ。写真でしか見たこと無かったから・・・』

「そうだったね、僕の家に来たとき兄さんとは一度も会わなかったんだたね」

「でも麗奈さー」


いきなり呼び捨て?

それに驚いた私は目を大きく開いた。


「あっ!ごめんな。いつも雪男がお前のこと麗奈さんって呼んでるからつい名前で呼んじまった!!」

『あぁ別に大丈夫です。私も奥村君って呼んでいいですか?』

「燐でいいぜ!それに楽に話してくれよな」

『う、うん!!』


燐、すごく優しい・・・

雪男くんとこういうところが似てるんだ。


「それにしても麗奈、本当にきれいだなー。あんまりまともに見たことなかったからさビックリだぜ!やっぱり雪男が言うとおりきれいだな!」

『えぇ!?何言ってるの燐!』

「だって雪男もそう言って「兄さん!!」

「いってぇ!なにすんだよ雪男!!」

「はぁ・・・ところで麗奈さんはどうしてこんなところに」

『あ、それはちょっと理事長に・・・』

「フェレス郷?」


雪男くんの顔つきが少し畏まった。


『そんな考え込まなくていいよ!!っていうか2人はこれからどこにいくの?』

「僕はちょっと依頼を受けて。麗奈さんも一緒に来ますか?」

『いいの?』

「はい、麗奈さんならもちろんです」

「おい雪男!なんで俺の時は色々言ってきたのに麗奈はあっさりいいっていうんだよぉ!」

「彼女は兄さんとは違って落ち着いてるからね」

「俺だって落ち着いてるぞ!」


この2人面白い。

こういうのが兄弟なんだ・・・


「さぁ行こうか」

『うん』
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