文章
□hunger
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※現パロ
少女はとてとてと駆けてきて、殺生丸のいるデスクの近くからにゅっと手を伸ばした。
「はい、殺生丸さま。」
そう言ってりんが差し出したのは、白くてぷにゅっとした甘いお菓子。
「…………。」
りんが持っていたのは、マシュマロだった。ちらとそれを見てから、りんをじっと見返す。あるのは、笑顔。
「見てるだけじゃなくて、ほら。取って。」
懸命に殺生丸に渡そうとするりん。それでも受け取らない殺生丸を見て、りんは勝手に理由を述べ始めた。
「りん、知ってるの。殺生丸さま、毎日お仕事してるでしょ。」
「ああ…」
「でもね、頑張り過ぎちゃうと疲れちゃうんだって。でね、疲れた時には甘いものが効くんだって。だから、あげるの。」
りんの食べたやつのあまりなんだけどね、と照れながら言う。ちょっとだけ申し訳なさそうだ。殺生丸は少しの間黙ってから、ゆっくり話し始める。
「そもそも。」「…そもそも?」
「お前といる時間自体が甘いというのに、甘いものなど…」
「ふうーん、そっかあ。あ、殺生丸さまってもしかして甘いものにがて?」
「…………。」
オブラートに包んで言ったのだが、勘の鋭い。そして、肝心なところは伝わらないのだな、と殺生丸は呆れた。
「残念。殺生丸さまのために、最後の一つだけとっておいたのにな。」
残念そうなりんの声に、殺生丸は反応する。
「じゃあ食べちゃ…「よこせ」
りんは手首を掴まれ引っ張られる。
口元へいくはずだったマシュマロは、それとは逆の方向へ。
指ごとぱくりと食べられると、殺生丸のぬるい舌が、りんの指先を舐めた。
りんは、顔がかあっと熱くなってしまった。
「〜〜ッ!!」
ああ、甘いってそういうことか。殺生丸の言葉の意味に気付いたりんは、恥ずかしさが込み上げてきてしまった。それを覗き込んできて、殺生丸は笑う。
「…どうした。そんなに甘かったか」
ああ、もう、
(マシュマロ食べたのは殺生丸さまでしょっ!)