ショートストーリー
□雨に歌えば
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「篤也、さっきからなに一人でニヤけてんだよ…ちょっと気持ち悪いぞ」
光樹は俺の顔を訝しげに覗きこんだ。
「うわ、ひど。恋人に向かって気持ち悪いはないんじゃない?」
そう言って軽く拗ねたフリをすると、光樹は笑いながら「ごめん、ごめん」と謝り俺の頭を優しく撫でてくれた。
その手の動きが心地よくて思わずウトウトと眠気に誘われる。
「光樹…」
「…傘をありがとう」
「篤也…」
「…傘を受け取ってくれてありがとう」
「「愛をありがとう」」
あの日の冷たい雨は貴男が差し出した暖かくて大きな傘が受けとめてくれたからいつの間にか止んでいました。
これからは日向のような暖かくていいお天気が続くことを僕は生まれて初めて知りました。
end.