main-短編


□webclap1
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「んも〜親父、用事て何ですのん?」

「くぉら真島ァ!!ノックくらいせぇって何べんゆうたらわかるんや!」


扉を開くなり地響きのような嶋野の怒声が組員達を怯ませる。
そんな中、慣れっこの真島はスタスタと嶋野の前に置かれた高そうなテーブルの角に腰を降ろした。

「そないノックノックて。なんややましい事でもしとるんですか〜?」


返事の変わりに拳骨がお見舞いされた。
頭を抱え込んでヒーヒー言っている真島をテーブルの上から引きずり降ろす。

嶋野の足元で、ちいさくなっているその様は本当に飼い主と犬のようである。






「真島おまえ、昨日女に金突き返されとったらしいのう。」



!!!!!


驚きの表情で思わず嶋野を見上げる。

あの車の前でのやり取りをまさか誰かに見られていたとは…不覚だ。


「そ、それ誰からの情報ですのん?」
「…風間や!!」


嶋野は心底嫌そうな顔をした。


「あの男、わざわざ今日幹部会の時に言いよったんや!おかげでわし恥かいたがな!」


項垂れながら革張りの椅子に座り直した嶋野は、その時の情景を思い出したのか、綺麗に剃られた頭に血管が浮いている。



「まぁまぁ、風間の叔父貴でよかったやん!」
「ど阿呆!風間が一番あかんのじゃ!!おまえもなに恥さらすようなマネしとんのや!!」


桐生が10年という刑期を終えて出所してきたおかげで、真島の女遊びも終幕を迎えるとはずだった。
それが最後に女から金を突き返されるとは、極道の、しかも組長にはあるまじき恥だ。


「理由がわからんからわしはなんも言い返せんかったんや!なんでそないな事なったんや!説明せぇ!!」





真島は、数日前に怪我をさせたところから嶋野に話した。





「おまえはけったいな女ばっかり捕まえよるなぁ。組持つ人間としてもっと見る目養わなあかん!」

「ちゃうねん!勝手にむこうから寄ってきよるんや!モテるって大変やで親父〜。」

「アホか!本人がけったいな人間やからあかんのじゃ!ええかげんそのセンスもどないかしたらどうや!」


それはこっちの台詞やで、と言い返したら本日二回目の拳骨が真島に見舞われた。




「せやけどその金突き返した女、勇気あるのう。普通極道相手にようせんで。」


真島は、面と向かって'一緒にいたくない'と言われたことを思い出した。本当に命知らずだ。金を突きだした時も、怯えることなく真っ直ぐ自分を見ていた。


しかし、いつ変なやつに引っ掛かって酷い目をみてもおかしくないだろう。



「ほんま、相手がワシでよかったもんやで。」

「なにゆうてんねん。たまたまおまえの機嫌がよかっただけやろが。」

「そ〜なんかなぁ〜…」

「風間がゆうとったで。狂犬に猫が立ち向かっとったってな。」


どうやら怒りはいつの間にか収まったようで、嶋野は鼻で笑いながら葉巻に火をつけた。


「親父、もう帰ってええですか?」

なんや用でもあるんか、と聞かれ、真島は、


「その猫、保護しにいくねん。はよ仕事かたずけんと!ほな失礼します〜!」



軽やかにステップを踏みながら一仕事終わらせに、金属バットを持って町へ繰り出した。








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