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□恋する狂犬U1
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「う……ふぇ……ふぇっくしゅん!!」


おでこに熱冷まシートを貼り付けてズビリと鼻をすすった私はぼんやりする頭で体の節々の痛みの訳を考えていた。

体中に熱がこもっているのになんだか寒気がする。そうだ、こんな時はあったかいお風呂に浸かって……


「あっ!ちゃんと寝とけゆうたやろが!」

「だってなんか体が冷えてるんだもん。」

「はぁ?冷えてる?何寝ぼけとるんや、高熱だしとるくせに。」



ベッドから起き上がろうとしていた私を押さえつけるように寝かせるとおでこのシートを勢いよく剥がした。


「あーっ!!もっと優しく剥がしてよ!」

「アホ!冬にプールではしゃぎたおして風邪ひいとる奴にやる優しさなんぞあらへん。」


プールじゃないもん温水プールだもん、と反論すれば彼はあきれかえった深いため息をついた。


「あのな、いくら温水やゆうてもぬるいやろ?そんなんに長時間浸かってあげく屋外ゾーンで浮いてたら風邪ひくことくらい予想せえ!」



ペチンとはたくように新しい熱冷まシートをおでこに貼り付けると、なんか食べるか?とさっきまでと違い優しく問いかける。

「おうどん食べたい。」

そう返事を返すといかつい顔が歪みはにかんだ笑顔を見せる。


「よっしゃ、待っとき。」




大きな体に強面の顔、そんな彼が見せる笑顔に惹かれたことが今まで何度あっただろう。

そしてそれが恋だと気づかないまま、私は大人になったんだ。







しばらくして彼が戻ってくると、部屋中に優しい出汁の香りが広がった。
柔らかな湯気を立たせた器を受け取り、温かい出汁を口に含めばなんだか心がほっとする。


「どうや?旨いか?」

「うん!」


ぺろりと食べ終わってお腹が満たされた私は、自然とほころぶ顔を見られるのが恥ずかしくてもそもそとベッドへ潜り込んだ。


「なんや、もうオネムか?子供みたいやなハル。寒ないか?」

「ん……ちょっと寒い…」

「ちょっと待っときや。」



そう言った彼は器をテーブルの上に置くと掛け布団を捲り隣に入ってきた。私の背中に寄り添うように横になった彼の大きい体にすっぽりと包まれる。


「ふふっ…、風邪うつっちゃうよ?」

「わしはお前みたいに軟弱ちゃう。」



小さい頃のように前にまわされたたくましい腕の重みに安心した私は、あっというまに眠りに落ちた。


「おやすみ…おにいちゃん…」

「おう、よう寝てはよ治し。」




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