main-連載
□恋する狂犬5
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"恋人同士"について本当の事を言い出せないまま1日1日、日は過ぎていく。
あれから数回食事がてらデートをし、連絡も真島がすれば留守電になってもちゃんと折り返しかかってくる。
恋人同士がすることはできているずだがなんだかスッキリしない。理由は明確である、この関係がカタチだけ、だからだ。
その日は珍しくハルからデートの誘いがあり、2人はさも、カップルが好みそうなレストランにいた。
「真島さん、明後日の夕方は予定あります?」
「ん〜、空けようおもたらいけるけどなに?何かあんの?」
ずるりとパスタをすすりながら、予定があるような口振りで真島は答えた。本当は調節しなくても空いているのだが。
指定された当日、真島は言われた通りPRONTの前に到着した。あたりを見回すがハルの姿はない。
今日こそは本当のことを話してスッキリしよう。
店のガラスに己の姿がうつることに気付いた彼は身だしなみを整えようと一歩近づいた。
ベルトの位置を直し、ジャケットの裾をピンと引く。
「あ…れ?」
うっすらうつる自分の奥、即ち店内にハルらしき姿が見えた。
「なんや中で待っとったんかい!」
ならば自分も店内に入ろうと、自動ドアの下に敷いてあるマットレスを踏みかけたが、ハルに言われた事を思いだし足を止めた。
『絶っっ対に外で待っていて下さい!』
なぜそんなに強く言うのかその時は疑問だったが、その疑問はたった今解消された。
ハルが男と一緒だから、だ。
なんの嫌がらせや!と、真島は思わず声を出した。中まで聞こえたのか、一瞬男がこちらを向いた気がした。
ワシの気持ちを知っといて、しかも今は一応恋人同士やというのに男とおる現場をわざと見せるなんぞ、そんなにワシのこと嫌なんか!
男がおったらワシが諦めるとでもおもってるんやろ!?残念でした〜諦めるどころかよけい燃えるっちゅ〜ねん!なにがなんでも奪ったろうやないかい!!
THE・略奪愛!!
「恋が走り出し〜たら〜♪君が止まらな〜い〜♪っと!」
怒って帰りたくなるような場面だというのに、正反対にハートに火がついた真島。
彼が歌うと爽やかさの欠片もない福●雅●の歌を口ずさみながら店の前にしゃがみこみハルが出てくるのを気長に待った。