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□恋する狂犬8
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真島さんのキスはお互いの唇の柔らかさを確認しあうような、キスという行為をしていることを楽しむようなものだった。
「もっと濃厚なのをされると思ったのに。」
真島さんの風貌や性格からして、もっと肉食なそのまま押し倒されてしまうようなキスを想像していた私は、予想外のキスが頭から離れなくて眠れずにいた。
初めはあんなに苦手な存在だったのに気づけば距離がぐっと縮まっていて、いつの間にか好きという感情が生まれてた。
今も、これから先もずっと一緒にいたいと思う。ずっとずっとこの関係が続けばいいのにと強く思う。
けれど、思えば思うほど膨らむ不安が私を引き留める。
真島さんは本当に私なんかでいいのだろうか
ただの気紛れじゃないだろうか
実際、私が真島さんに気があるとわかってから、彼は「付き合おう」の類いの話はしなくなった。
こんなに私が悩むのには理由がある。
仕事がなくなったのだ。
細かくいえば、今店が入っているビルを建て替えるらしく完成がいつになるかは未定らしい。運良くそこにもう一度店をオープンすることになったとしてもいつになるかわからないのなら待っているわけにもいかない。
もうすでに店内は撤退作業に入っていて、私はとりあえず他店に応援で行っている。
肝心の住居だが、しばらくは住んでいて構わないと言われ安心したものの、そううかうかしていられない。
他店に異動させてもらってもそこには寮がないのでどこかに部屋を借りなきゃいけない。
とにかくお金があるにこしたことはない。
私は渋々夜の世界に手を出した。
けれど神室町ではどのお店も断られとしまい、仕方なく少し離れた街のキャバクラに通うことになった。
幸いドレスはお店の不良品を貰えるので困らないし、キャバクラは自由に出勤していいシステムだったのでまだ真島さんにはばれていない。
真島さんに好意を持つ前は、1人で東京にいる理由もないしもう大阪に帰ろうと思ってた。
けど今は違う。
真島さんがいるから東京にいたい、神室町から離れたくない。
だけどもし、真島さんが私のこと遊びだったら……
頭の中がぐるぐる堂々巡り…
いつの間にか私は眠っていた。