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□恋する狂犬U-14
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「いやぁ〜〜!よう見えるって最高やなぁ桐西田ァ〜〜〜〜!!」


神室町に仕掛けられた爆弾を処理するために動き出した真島は至極ご機嫌な足取りで目的地へ向かっていた。


「せや西田、来年は初詣行くで。」

「へ?どないしたんですか?!毎年神さんなんか役に立たへんゆうて行きませんやん。」

「いや、ワシな……霊感持ちなってしもたんや……。ひっさびさに死の淵さ迷ったやろ?あん時に覚醒してしもたみたいや。」

「ゆっ幽霊見えるんですか親父っ?!」

「いや見えん。見えんけど接触したんや、声も聞こえた。恐ろしいわぁ〜〜!!」


大げさに両肩を抱いてブルブルと震え上がる。


「あ、せやけど天使にも会えたんやで。」

「は?天使???」



意識を手放す時、あの時確かにハルがいた。
けれどよくよく考えればこの神室町にいるわけがない。きっと死にかけた自分自身が見せた幻だった、そう思うようにした。

あの時死んでたらもっとハルと会えてたんやろか。

そう思うときもある。


「天使がな、ワシに駆け寄ってきて介抱してくれたんや。ええか西田、人間死にかけた時一番会いたいもんに会えるみたいやで。自分もよう考えて生きて死ななあかんで!」


「ゆうてることが滅茶苦茶な気ぃしますけど肝に命じときます。」







その頃ハルは新しい部屋のソファーの上で悩んでいた。

結局、当初の目的だったドン・キホーテに行くことをすっかり忘れ病院から帰ってきてしまった。挙げ句いつのまにか眠りこけていて目覚めたものの着替えの用意がない状態。

洗濯してシーツを巻いて一日中部屋にいるか、それともこのままの服で買い物に出かけるか……。


「……パンツだけなら手洗いでドライヤーでなんとかなるか……。」



数時間後、まだ完全に乾いたとはいえない下着を穿いて、ハルはドン・キホーテへと向かった。

真島が目を覚ましたと柏木から連絡を受けていたのでもしかしたらどこかにいるかもしれない。もし会ってしまったらどんな顔をすればいいのだろう。
考えることは山ほどある。でもとりあえず着替えの事だけ考えよう。



ハルがそんなちっぽけなことを考えている時、真島と西田は最後の爆弾処理に差し掛かっていた。



「……赤や!」



……パチンッ……


「次は…………青やなっ!」


…………パチンッ……




これ。失敗したら死ぬやろなぁ〜。



西田が冷や汗をかきながら導線を切っていくのを見ながら真島はぼんやりと考えていた。



運よく生き残った組員はまあ柏木が面倒みてくれるやろ。そもそも柏木らが被害被れへんかったらの話やけど。
西田なんかまだまだやり残したことようさんあるやろうなぁ〜。えらいとこ連れてきてしもたなあ。

まあワシはついこないだ死にかけたとこやし別に死んでしもてもまあええっちゃええけどな、最後に天使にも会えたことやしな……。



いつのまにか残りは2本。



「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な・神・様・の・言・う・と・お・・・り・・・・・決まった………………赤や!!」



勘、で切るのを決めていると伝え、最後の2本のどちらを切るか必殺神頼みで決めたところで西田が騒ぎだした。


「そもそも親父っ、神さんなんか信じてへんくせにこんなとこで神頼みなんか!!!」

「やかましいわアホ!!さっきゆうたやろ?!来年から初詣行くって決めたんや!前借りとして神さんかて運くれるやずや!」

「初詣に前借りもなにもありませんて!!」



時間がない。

こんなところで騒いでゲームオーバーなんて絶対に許されない。


苛立った真島は切るのを渋る西田の手から荒々しくニッパーを奪い取ると、残った最後の2本の内、心に決めた色に手を伸ばす。















「とりあえず明日の分の着替えは買えたから明日はゆっくり電車に乗って買い物にいこう。」



突然おなかの虫が鳴き、ハルは何食も食べていなかったことを思い出した。記憶にあるのは1人書類を取りに来た日の朝食、そして龍司を待つ間に飲んだカフェラテ。


がっつりごはんを食べたい。
そう考えたハルは初めての1人焼き肉をしに韓来へと向かい歩き出した。


いざ店の前まで来るとやっぱり少し勇気がでない。カフェや映画は1人でもなんら気にならないけれど焼き肉となるとどうしても数人での来店客が多いので気が引けてしまう。


「……これくらい1人でできなきゃ柏木さんにまたバカにされちゃう。これから1人でなんとか生きてかなきゃなんないんだし!」



勇気を出し一歩進むと自動ドアが開く。食欲をそそる匂いにさっきまでの不安はどこへ行ったのか、駆け込むようにハルは店内へ入っていった。











さすが親父!


と言わんばかりの満面の笑みで真島の肩を揉み労う西田。でも心の中では一生分の運を使い果たしてしまったのではないかと考えていた。

親父の分と自分の分、二人分の一生の運だけでは神様も納得しないだろう。あと誰が犠牲……いや、ヒーローになったのか……。




「飯でも食いにいこか。仕事した後は腹が減るのぅ〜〜。」

「へい。」



これから郷田龍司との決戦に向かう桐生と軽く言葉を交わした真島は、賽の河原を出ると長い革に包まれた足を見せびらかすように広い歩幅で町を歩いていく。



「桐生さん、大丈夫ですかね?」

「な〜にゆうとんねん!こんなとこで負けよったらワシがたまったもんやないで!桐生チャン倒すんはこのワシって決まってるんやからなぁ〜!」


桐生の強さは何度も拳を合わせている真島が一番よく知っている。心配なんて必要ない。


「親父、何食べるんすか??」

「そんなん決まっとるやろ〜肉や!柏木のオッサンも呼んで冷麺食わしたろかいな。どうせず〜っとピリピリしとるんやろ、寿命縮みよるでぇ。」

「でしたら自分、柏木組長に一度連絡いれてみます。」



お〜、先入っとるでぇ〜〜!、と真島が歩みを進めると韓来の自動ドアが開いた。















「…………て…………天使がおる………………。」








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