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□恋する狂犬U-8
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キスされてたらどうなってたんだろう…





酒に酔ったお兄ちゃんと、もしあのまま唇を合わせていたらきっと私はどうしようもなくなっていただろう。

好きな人ができて彼氏ができて、それなりの男と女の関係も持った。
だけどどうしてもどんなに彼氏のことが好きでも自分の中の一番は塗り替えることができなかった。


まるで愛の告白のような呟きが耳から離れない。

あれがもし本心だったら……




重い腕の下から這い出したハルは出しっぱなしになっていたミネラルウォーターを渇いた体に流し込んだ。

ふう、と息をはいてから昨夜の事を思い出す。
本音を言えばキスされたかった。

そして、そう思ってしまう自分をかき消そうとしてみるもののそれはもう手遅れだったようで、気がつけばぐっすり眠っている龍司の顔をのぞき込んでいた。


少しかさついた唇を人差し指でそっとなぞれば、違和感を感じたのか閉じられていた唇がゆっくりと隙間を開けた。

しかし特に起きる気配はない。






ほんの少し



ほんの一瞬だけ…






ハルは龍司の唇に自分の唇を寄せた。



かさついた下唇を自分の唇で優しく挟む。

彼氏と交わすキスとも違う、一方的に唇の感触を味わうだけの行為。



ほんの少し、一瞬だけと思っていたのに、いけないことをしているという気持ちがもっと、もっとと強請ってしまう。


もし彼が目覚めてしまったらどうなるのだろう。
昨日の今日だ、そのままこのたくましい腕で力強く抱きしめて、がむしゃらに唇を合わせてくれるだろうか。


いっそそうなってしまえばいいのに。



そう思いながらも脳裏をよぎる兄妹という言葉。


彼がもし、この私達を縛り付けている【兄妹】というものを壊してくれたなら…






突然の着信音にハルは体をびくりとさせた。
慌てて龍司から離れると鞄の中から携帯電話を探す。



「あ、もしもし、うん…起きてたよ。………あのね、今日会える?………話があるの………。」






ハルはその日、彼氏に別れを告げた。







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