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□恋する狂犬U-17
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店員さんに案内される隙もなく中道通りに面したガラス横の席に向かう真島さんに少し戸惑いながら後ろを着いていき椅子に座る。


「苺のパフェとコーヒー頼むわ!」

「かしこまりました。」


目を丸くして見ているとそれに気づいた真島さんが少し眉を下げながら私の顔を見つめる。


「あれ……?苺、好きちゃうかった??」

「えっ?!あ、好きですけど……」

「せやんな?よかった〜。なんぼでも食べや〜!」


私の好みを覚えてくれていたことに驚いているのを気付かない振りをしているのか、彼はポケットから煙草を出すと火をつけて美味しそうに煙を吸い込む。


「ほんでなぁハル、どのツラ下げて言うとんねんて思うかもしれへんのやけど……」

「はい??」

「またこんな風に飯行ったりせえへんか?」


うっっ?!?!ゲッホゲホゲホッ……



突然の真島さんの予期せぬ言葉に飲み込もうとしていた水がいけない方向へ入ってしまい、私は盛大にむせた。


「オイ大丈夫かいな?!」

「ッゲホッ……はぁ…………すいませんもう大丈夫です。」

「そないワシおかしなこと言うたかなぁ〜。」


おしぼりで口元を拭きながらちらりと真島さんに目をやると、眉間にシワを寄せてモワリと煙を口から吐き出していた。




いつのまにかテーブルに置かれたパフェとコーヒーに気がついた私は真島さんの前にコーヒーを置く。


「どや?返事聞くまでコーヒーもパフェもお預けや!」

「そんな子供みたいなこと!」


フフッと笑いあった後で、どうぞ、と彼がパフェを指差す。


「いたただきます!」



添えてある生クリームを口に運ぶと一気に幸せな気持ちになる。焼き肉も幸せだけど甘い物も幸せだ。


「あ、いやもちろんハルが嫌やったら無理にとは言わんで?!やけどこの広い世界でもっかい会うことができたんや、これは運命やと思わんか?!」

「運命……ですか。」

「せや!やから何かあったらワシに頼ってくれてかまへんしなんぼでも力なるで。どうせまたこっち戻ってきたけど知り合いおらんのやろ?」

「……よくおわかりで。」


なんでもお見通しの真島さんにわざとむくれた顔を見せる。


「どうせ知り合いも友達も少ないですよ私!別にいいもん、慣れっこなんだし!」

「おーおー、まあそない吠えんでもええやん。そりゃ知り合いも友達も多いほうがええやろけどそれが浅い仲ならなんの意味もあらへん。ほんの少しの人間でも深〜い仲のがええ。そう思わんか?」

「そりゃそうですよ!」

「ほな深い仲のワシを頼りにせぇや。こないいろいろ役立つ男そない転がっとらんで〜。」


小さなティースプーンで私のグラスの縁に垂れかかっていたアイスをすくい口に含む。ヒョイと眉が上がったその表情を見た私は、グラスを二人の真ん中へと移動させる。


「やっぱたまに食う甘いモンはウマイなぁ!!」

グラスにティースプーンを突っ込みアイスをすくう。なにげにそれを見ていると、真島さんが器用に苺を避けていることに気がついた。


「苺、どうぞ??」

「ン?ああ、かまへんかまへんハルが食べ。」



譲られたそれを頬張りながら、私は彼に龍司くんの話をするか迷っていた。















「ほぇ〜けっこうええマンション住んどるやないか〜。」


平気だといったのに聞かない真島さんはとうとう私のマンションまでついてきてしまった。


「ね?暗い道なんてなかったでしょ?」

「アホ!明るいから安全とは限らんのや!」


コツンと柔らかく私のおでこに拳を当てる。


「せやけど見たところけっこう中も広いんちゃうん〜一人で住んでんのん??」

「はい、今は一人ですけどいずれは兄が一緒に住むかも……みたいな。」

「そうか〜。そのニイチャンは今どこおるんや?」

「え〜と……自分探しの旅??」


眉をしかめた真島さんはガードレールに腰を降ろし煙草に火をつけた。


「ほなまた飯いこ。ホレ、はよ部屋入り!」

「あ、はい。今日はごちそうさまでした!」


背中に視線を感じながら私はオートロックの扉を開き自室へと向かった。
ふと、昔彼と出会った頃の事を思い出した。
お店の前のガードレール、よくそこに腰を降ろして私の上がりを待ってくれていた。

エレベーターを降りて廊下を歩きながら下を見ると視線を感じたのか真島さんが上を向く。
ひらひらと手を振れば左手を少し上にあげてそれに答える。
しばらく上から眺めているとふいに鞄の中で携帯電話が震えていた。

「はい?」

「はい?ちゃうわ、はよ部屋入らんかぃ!」


下を見るとガードレールから立ち上がった彼がはやく入れと手を使ってゼスチャーしている。

「コラ!聞いてんのか!!はよぅ入れっちゅ〜ねん!!はよせなワシ乗り込むで!!」

「キャー!!」

「キャー!!やない!!」

「ふふっ、ごめんなさい!ありがとうございます。また連絡しますね!おやすみなさい!」



部屋に入り電気をつける。
ガランとした最低限の物しかないこの部屋を少しずつ自分のお城にしていこう。そしてこの神室町で根を張って生きて行こう。

お風呂にお湯を張りながら私はひさしぶりに鼻唄を歌っていた。








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