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□恋する狂犬U-15
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ちょっと整理しよか。


桐生チャンに東城会守れ言われて千石組の兵隊ぶっ倒したやろ。
ほんでブランクあるのにちいとばかり無茶したせいでバタンキューや。そん時に一回天使と遭遇してるねん。
んで目覚めて組戻ってまた桐生チャンと花屋のオッサンと会うたやろ。どうやら神室町に爆弾仕掛けられてるっちゅーことでワシら解除しに出掛けたやろ。

西田とギャーギャー言いながら無事解除できて、桐生チャンと喋って渇入れてから腹へったから飯に出てきた……確かそうや。


けど…………


奥の席で黙々と肉食うてるのは天使や。



あれ?もしかしてワシ爆弾失敗したん??
どこからが夢のお話??西田に肩揉まれてたあたりからもう夢やったんかいな??


いやーワシ死んでしもてたんかいな!!それはそれは知らなんだでぇ!!



まあエエっちゃエエねんけどやっぱり一旦死にかけて生き返った手前、ちょっとガッカリやなぁ。配線かてワシの強運でヤッタ!とおもてたんやけどなぁ……。


ま、死んでしもたんならしゃーない、死んでも腹は減るみたいやしとりあえず天使見ながら肉食お。



「ネエチャン、ホルモン盛り合わせと生!」



天使がよく見えるように近すぎない少し離れた席に座って煙草をくわえる。近づきすぎて消えてしもたら困るからのう。


「親父、お待たせしました。」


ポケットをごそごそしていたらタイミングよく西田が火を差し出した。

炎に煙草の先をかざし息を吸い込む。点火したと判断した西田が一歩下がる。


「柏木組長、来ないそうです。桐生さんが頑張ってるのにお気楽なもんやな、とゆうてはりました。」

「西田ぁ……」



ワシが失敗したせいでこいつも道連れにしてしもたんやろか。すまんことしたのぅ。せめて女の1人や2人紹介しといたったらよかったなぁ。



「堪忍やでぇ西田。ワシと道連れに地獄行きなんて。」

「は?地獄??自分地獄に落ちるんっすか??」

「そりゃオマエ、ワシより悪さしてへんゆうても人殺しとるんやから天国には行けんで〜。」



まあ座り、と手で合図すればよほど地獄の話に夢中なのか真正面に座りよった。


「アホゥ!そこはアカン!一個ずれぇ!!」


頭の上に?マークをだしながら言われた通り西田は一つ席をずれた。おかげで天使はちゃんと見えとる。


「そりゃあ確かに自分、天国に行けるとは思とりませんけど自分が地獄なら親父は大地獄ですよ?」

「大地獄?!ほぉ〜〜受けてたったろやないか!閻魔大王はさぞかし強いんやろなぁ〜?」


テーブルに届いたホルモンをポイポイと網に乗せていく西田。生ビールをグビリと飲みながら視線を変えて天使を見る。

肉と米。まるで成長期の部活の男子みたいに肉を口に入れたらそのまま米を突っ込んで旨そうに食べとる。まだ半分くらい米は残っとるけど肉がちょっと少ななっとるな、追加するんかな。


メニューを開いてにらめっこ。もう塩タンはいらんやろ、一発目に頼んどるはずや。カルビかロースか、それともハラミか??


「……タン塩一人前追加で!」


エエー?!さっきタレの肉食べてなかった?!もっかい塩タンに戻るんかいな?!まあエエけどちゃんと網替えてもらわなあかんで天使チャン〜。

さすが神室町の焼肉屋韓来。頼まずとも網の交換にやってきよった、さすがやで。


「親父、そろそろ食べ頃ちゃいますか?」

「あ?おお、忘れてたわ。大事に育てたか?ワシのホルモン。」


口に放り込み数回噛む。ジュワッと油が広がってそれをビールで流し込む。


「あ〜〜!ウマイ!!!ホレ、西田も食べぇ!」

「へい!いただきます!」


旨い酒に旨い肉、視線の先には天使。最高やな!こうやって持ち上げといてバァーンと地獄に叩き落とすつもりやな。ええ根性しとるやないか。


…………ん?どないしたなんか変な顔しとるで?……ああ、さっきの勢いで塩タンをタレに突っ込んでしもたんやな。そりゃ残念。まだ数枚残っとるから我慢して食い〜な。


「親父、追加しますか?」

「おお好きなもん頼めや。最後の晩餐やからのぅ、いやちゃうか、もう死んでるんやからなぁ!」

「自分ら地獄行きっすからね!……すんませーん!注文いいっすかー?!」


いつのまにかうちのテーブルは肉だらけ。西田、オマエそんなに大食いやったか?まあええけど。



…………んん?また追加か??メニュー見るんはええけどその箸で掴んだままの肉、先に皿に置くなり口に入れるなりせんと落としてエライ目に……


「あ……」



思わず声が出てしもた。

ポロリと箸から落ちた肉は予想通りタレの中にダイブして天使の服にタレがはねた。
そんな、しもた!!て顔しててもしゃーないで!とりあえずオシボリもろてはよ拭き!


「親父どないしたんですか?……てかさっきから何見て…………!!!!」


西田が天使を見つけて口をパクパクさせながらなぜか冷や汗をかきだした。
そりゃそうやわな、見えたらあかんもん見えてしもたんやもんな。


「親父っ…………!!」

「……見えてしもたんか西田。御愁傷様。ワシらが来る前からな、天使が肉食うとるんや。」

「へ?天使??」

「せや……。こないだ教えたったやろ?死にかけてるとき一番会いたい人に会えるんやで、て。ワシの天使がオマエにも見えてるなんてラッキーやのぅ西田。」

「いや親父、そりゃハルさんは親父にとって天使かもしれませんけどあれは……」


…………アワワ、と慌てながらオシボリで拭いてはみたもののやっぱり染みになってしもとる。すぐにでも替えの服用意してやりたいのは山々やけど、あいにく天使が着る服なんかこのへんには売ってへん。


「……ワシの天使汚したこのタレ、この世から抹殺したろか。」

「いやいやいや、そんなことしたら駄目!これから先ずっと焼肉塩で食う羽目になるやないですか!」


…………もうあきらめたんか、オシボリを置いた天使は再びぱくぱくと肉を胃袋に押し込んでいく。ほんまに見てて気持ちええ。ワシと来たときもようさん食うとったけどここまでやなかったなぁ。


「西田ァ、そろそろいこか。」

「え、親父あんまり食べてないですやん!肉もまだ余っとりますで?」

「なんや天使見てたら腹一杯なってきたわ。それに天使が目の前からおらんようなるの見るん嫌やん?せやからワシ先に帰るで。」



オマエはそれ平らげてから組戻ってきぃ、と西田に伝え、ワシは伝票を持つとレジへ向かった。


「おおきに、ごっそさん!」

「ありがとうございました!」



なんやご機嫌な気分なったワシは、馴染みのバッティングセンターへ顔を出しに軽い足取りで歩きだした。




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