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□恋する狂犬U-12
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「さっすが桐生チャンや……あいかわらずごっついのぅ〜〜!」





差し出された桐生の手を取らずに、真島は仰向けに倒れ込んでいたリングから立ち上がった。




大きな水槽のある部屋で待っていた真島は桐生の申し出をのんだ。



「東城会に戻ればええんやろ?」







―東城会に戻ってくれ―

あの時簡単にそう言ってのける桐生に真島は少しいらっとした。



そりゃあ、本音を言えば極道の世界に戻りたいと思うときもないことはない。
力さえあればどうとでもやってこれたあの世界。



組を守る為ではない、ただ嶋野を守る為だけに闘い続けていたあの頃。


そして嶋野と同じぐらい守りたいと思わせた女の存在。



その二人の為に命をはっていたと言ってもおかしくはないだろう。




だが嶋野は守りきれずあの世へ逝き、さんざん傷つけてしまった女は自分の元から去っていった。



あの頃に戻れるなら喜んでいますぐ東城会に戻るだろう。



しかし守るものがない今、戻ったところで自分に何ができるのか、何をしたいのか、全く想像すらできない。


カタギとして真島建設を立ち上げた今、こうしてのほほんと生きていくのも悪くはない。





「せやけど簡単に思わんといてや。ワシ、東城会のこと大事やなんておもたことないし、そもそも今の組には魅力もあらへん。守るもんないとやってられんで。」



「だから言ってるじゃないか。戻らなくてもいいんだ、とにかく組を助けてほしい。」


「アホ抜かすな。ワシ1人でどない助けろっちゅーねん。」





デスクの上に脱いだヘルメットをゴトリと置くと、蒸れて痒かったのであろう頭をわしゃわしゃとかきむしる。



「っはぁ〜〜!きもちええわぁ〜〜!」





なかなか首を縦に振らない真島に桐生はとっておきの情報を真島の伝えるか悩んだ。







それは関西でハルに会ったこと。






しかし知らせたところでどうしようもない。


それに彼女は幸せそうだった。




下手に知らせるべきでない。








「桐生チャンは、あのセレナのネエチャンが好きやったんやろぉ?せやのにそないすぐに新しい女に手ェ出すんやなぁ〜。」


「兄さんっ!狭山とはそういう関係じゃねぇ!!」


「冗談や!そないカッカせんといてぇな〜。」





すぐに話をそらす真島に桐生はため息をついた。



なんとしてでも真島に力になってもらわないと確実に近江連合に東城会は潰される。




「なあ真島の兄さん、俺達が命張ってきた東城会が近江連合に潰される……あんた、それを黙って見てるってとはないよな……?」


「そりゃあ潰されるってなると気分ええモンやないなぁ……ま、自滅やったらどうでもええけど。」




しっかしひさびさのドスはやっぱきもちええのぉ〜





ニヤニヤしながらドスの刃先を眺める真島は、先程の桐生との一戦を思い出していた。



最終的に今回は負けたが、やっぱり足を洗ってからのブランクはでかい。昔のままならあんなところでやられることはなかったはずだ。



これからも桐生と戦うにはやはり実戦を積むしかない。



とにかくあの一戦は納得できない。






「……はぁ〜…………わかった、約束したことはちゃんと守る!ワシは嘘つきは嫌いやからなぁ!」



「本当か?!」


「男に二言はあらへん!とにかく助けりゃーええんやろ?せやけど東城会なんてでかいもんよう助けん、ワシはこの大事な神室町を守る。それでええか?」



「神室町を?」



「せや。この神室町がなくなってしもうたらワシら行くとこあらへんようなる。それにこの町はワシも桐生チャンもようさん思い出があるやろ?メチャクチャにさせるわけにはいかんからな!」



「上等だ。恩にきる。」





桐生は頭を下げるとまた街へ消えていった。





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