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□恋する狂犬U-6
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真っ暗の部屋の中、ベッドの下に落ちている携帯電話の着信を知らせる点滅ライトが蛍のように空間に浮かぶ。
いつも通り少し眉間に皺を寄せながら瞼を閉じている龍司は、眠ろうとすればするほど良からぬ事を考えて頭の中だけが起きている状態で一睡も出来なかった。
昨夜、ハルを後ろに乗せて少しドライブをした後泊まりに来るように誘ったが彼女は首を横に振った。
「明日学校だから。」
もっともな理由でその時は納得してしまったが、こうして一睡もできずにいると考えたくもない想像が膨らむ一方で吐き気がする。
本当の理由は男と過ごした幸せな誕生日の余韻に浸りたいからではないか
自然に眠りに堕ちるまで電話越しに男の声を聴いていたいのではないか
そして、初めて男を受け入れた心と身体の変化が龍司を受け入れなかったのか。
首筋に咲いた赤紫色の跡は間違いなく唇によって付けられたもの。自分はあまり興味がなくてやった試しがないがよく女に付けられていた。あれは所有者がいると他人に知らせるマーク、独占欲のある人間が付けたがる印し。
ハルの裸なんて実際に見たのは子供の頃で、胸も無ければ大切な部分を覆う毛すらなかったのに、どういうわけか頭に想像されるのはれっきとした女の身体に育ったハル。
自分が今まで抱いてきた女。こちらに尻を向けて猫のようにしなやかな曲線を描く背中を眺め、右腕を引き上半身を起こさせる。快楽に惚けながら振り返ったその顔がハルにすり替わる。
アホか 妹や
さらに眉間に皺を深く寄せ強く瞼を閉じてからかき消すように勢いよく目を開いた。
うっすらと光が漏れていることに気付き、龍司はベッドの下に手を伸ばし携帯電話を掴んだ。
届いている数件の女からのメールを飛ばし、ハルからのメールを開く。
【今日は送ってくれてありがと!明日の放課後ケーキ食べに連れてって( ´艸`)】
毎年当たり前のように龍司と過ごしていた誕生日を別の男と過ごした事を彼女なりに負い目を感じているのだろう、なんとか今日の埋め合わせをしようとする内容に少し苛立つ。
龍司はそのまま返事を返さずに、翌日も彼女を迎えには行かなかった。