緋色の鎖

□第八章
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「難しくなんかねぇ。簡単な話だ」

「・・・確かにな」

「?」


どういう意味だと首を傾げる辰馬に、二人はその口元に笑みを乗せて答えた。


「昔に戻るだけだ」

「アイツがそれを望むんならなァ」


昔。
四人が揃い、まるで奪い合うように銀時に寄り添っていた日々。

それは戦火に包まれながらも確かに幸せで、同時にその中央に居た銀色が一番不安定であった時期でもある。
しかし今は、その戦火が無い。
変わりにあるのは・・・


「それで高杉。例の事件の事だが・・・」

「・・・あぁ」


三人は再びその顔を暗く俯かせる。
確かに今、あの地獄のような戦は終った。
しかし、今銀時の置かれている状況は、ある種それよりも地獄といっても過言ではない。


「あいつらは血眼になって銀時を探していやがる」

「・・・なんで、金時が不利になるようなマネするがか・・・?あいつは金時が大好きだった筈じゃきに」

「さぁな。そんなもんは本人に聞け」

「聞けるのはお前だけだろう。・・・俺達では目前に立っただけで斬り殺される」


深く溜息をつく桂を軽く睨んでから、高杉はその目を再び窓の外へと向けた。


「・・・実際に斬られたのは、俺の方だろうが」

「斬られて生きちょったんなら、儲けもんじゃあ」

「今此処で斬り殺されてぇのかてめぇは」

「なんにせよ、あの男の真意など考えても無駄なことは分かっている」


再び大きな溜息をついて二人の会話を止めた桂は、話を強引に元に戻した。


「大事なのは、今真撰組に・・・アイツに銀時が見つかる事だけは避けねばならんという事だ」

「まぁな。・・・今会わせりゃ、今度こそぶっ壊れるぜぇ・・・?」

「そげなら良い考えがあるきに!!」


手をポンと叩いて声を上げた辰馬に、二人は何だと視線を向けた。
人差し指をびしりと立てた辰馬は、口元を愉快気に笑わせながらも、グラサンの奥の瞳はニヤリと細めた。








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