緋色の鎖
□第四章
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「あぁ、確か、攘夷戦争後期にその名を轟かした伝説の男・・・だったと思いやすがねィ」
「まるで鬼のように天人を斬りまくって、その強さは化け物じみてたそうだ」
「そいつがどうかしたんですかィ?」
「狂乱の貴公子よりも、鬼兵隊を率いた狂犬よりも、もっと恐ろしい存在だった白夜叉。・・・そいつの今の名前が・・・坂田銀時だ」
「・・・・っ!!??」
沖田は驚いて眼を見開く。
しかし、土方の顔は反対に、さも忌々しそうに歪められていた。
「アイツは俺に何も言わなかった。元攘夷志士だって事も、そんな過去の事も」
その唇を噛み締めて、刀を握り締めた土方は沖田に背を向け、吐き捨てるように続けた。
「俺らは騙されたんだよ。へらへら笑って懐に忍び込んで。こっちの隙を見て切り崩された・・・!」
「・・・本当に、旦那がそんな事する方だと思ってんですかィ・・・?」
眉をしかめて、外に出て行こうとする土方を止めるかのように沖田が声をかける。
土方はその足を止めて、しかし顔は振り向かせる事なくそれに答えた。
「・・・現実がそうだと言ってんだろうが」
「旦那がそんな腹持って俺たちと付き合える程、器用な方だとは思えませんがねィ」
「何が言いたい」
「アンタが信じないで、誰が旦那を信じるんですかィ?」
「・・・?」
訝しげに振り返った土方を、沖田はその目を鋭く細めて睨み付けた。
「俺はこの一連の事件の真相が、そんな理由だとは思えねぇんでさァ。・・・確かにやったのは旦那かもしれねぇ。でも、まだ裏がある気がしてならねェ」
「どっちにしろ、犯人が奴なら俺は奴をしょっぴく」
「俺は旦那が好きだ」
「・・・っ」
「でもその旦那はアンタに惚れ込んでる。そのアンタが、旦那をしょっぴく・・・?それがどれだけあの人を傷つけるか、分かってんですかィ?」