緋色の鎖

□第四章
2ページ/3ページ




「あぁ、確か、攘夷戦争後期にその名を轟かした伝説の男・・・だったと思いやすがねィ」

「まるで鬼のように天人を斬りまくって、その強さは化け物じみてたそうだ」

「そいつがどうかしたんですかィ?」

「狂乱の貴公子よりも、鬼兵隊を率いた狂犬よりも、もっと恐ろしい存在だった白夜叉。・・・そいつの今の名前が・・・坂田銀時だ」

「・・・・っ!!??」


沖田は驚いて眼を見開く。
しかし、土方の顔は反対に、さも忌々しそうに歪められていた。


「アイツは俺に何も言わなかった。元攘夷志士だって事も、そんな過去の事も」


その唇を噛み締めて、刀を握り締めた土方は沖田に背を向け、吐き捨てるように続けた。


「俺らは騙されたんだよ。へらへら笑って懐に忍び込んで。こっちの隙を見て切り崩された・・・!」

「・・・本当に、旦那がそんな事する方だと思ってんですかィ・・・?」


眉をしかめて、外に出て行こうとする土方を止めるかのように沖田が声をかける。
土方はその足を止めて、しかし顔は振り向かせる事なくそれに答えた。


「・・・現実がそうだと言ってんだろうが」

「旦那がそんな腹持って俺たちと付き合える程、器用な方だとは思えませんがねィ」

「何が言いたい」

「アンタが信じないで、誰が旦那を信じるんですかィ?」

「・・・?」


訝しげに振り返った土方を、沖田はその目を鋭く細めて睨み付けた。


「俺はこの一連の事件の真相が、そんな理由だとは思えねぇんでさァ。・・・確かにやったのは旦那かもしれねぇ。でも、まだ裏がある気がしてならねェ」

「どっちにしろ、犯人が奴なら俺は奴をしょっぴく」

「俺は旦那が好きだ」

「・・・っ」

「でもその旦那はアンタに惚れ込んでる。そのアンタが、旦那をしょっぴく・・・?それがどれだけあの人を傷つけるか、分かってんですかィ?」













次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ