緋色の鎖
□第十章
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「コイツはどういう事でィ!!!」
いつも気だるげな様子の少年が、珍しく血相を変えて叫び声を上げている。
その手には一枚の紙切れ。
それは握りつぶされてはいるものの、突きつけられている本人には直ぐに何か判断することが出来た。
「・・・そりゃこっちのセリフだ。テメェこそどういうつもりだ?」
自室にて煙草を吹かしながら資料を読んでいた土方は、突然乱入してきては怒り狂っている部下を見ることもなく苦言をもらす。
それに更に機嫌を悪くした沖田は、持っていた紙切れを此方を見ろと言わんばかりに机に叩き付けた。
「どうもこうもねぇ。・・・何でこんなもんが出回ってやがるんでィ・・・!」
叩き付けれた紙に見えるのは銀髪の男の写真と、その下になんらかを示す金額。
それは言うまでも無く、”指名手配書”。
「んなもんそいつが犯罪者で、現在逃亡中だからに決まってんだろうが」
「まだそうと決まった訳じゃないってのに・・・コイツは早計過ぎやしやせんかィ・・・!?」
かつて無い程の剣幕で迫る沖田。
しかし土方は顔色一つ変える事無く、ただ静かに眼だけを沖田に向けた。
「むしろ遅すぎたくらいだろうが。もう被害者は出てんだ、腹くくれ」
「・・・っ」
激昂する沖田に対して、静か過ぎる程の土方。
それこそ、異常なまでに。
「土方さん、アンタ・・・旦那の事なんだと思ってんでィ・・・!!」
「犯罪者」
「!!」
机を乗り越えて土方の胸倉に掴みかかる。
しかし、抵抗する事も無く静かに自分を見据えてくる瞳に、沖田は隠す事も無く舌打をした。