緋色の鎖

□第九章
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今、目前に立つこの銀色の存在。
圧倒的な威圧感と、凄絶なまでの妖艶さに二人は思わず息を呑む。

この存在が、自分達の知る銀時で無い事は明らかであり、ならばそれが誰であるのかも理解しているはずであった。


しかし、何度見ても。


一向に口を開こうとしない二人に、銀色は一度口角を更に引き上げてニタリと笑うと、その口から声を発した。


「随分と、久しぶりだな。・・・・晋助」


その声音は確かに銀時の物。
見慣れた紅い瞳は真っ直ぐに高杉を射抜き、一瞬たりとも逸らされることは無い。
直接名を呼ばれた高杉は目を見開き、直ぐに無理矢理にでもその口元に笑みを乗せる。


「あぁ。・・・あの時ぶりか」


高杉は答えながら刀の柄を握る手に、更に力を込める。

やはり。

この存在は高杉にしか興味を示さない。
それ以外は全て、この者にとっては野に立つ木よりもどうでもいい事なのだ。
桂は静かに息を殺し、しかしいかなる場合にも対応出来るよう神経を研ぎ澄ました。


「丁度良い・・・おめぇには聞かなきゃならねぇ事が山程あらァ」


高杉は銀色から一切目を離さず、尚も続ける。


「一体どういうつもりだ?おめぇは何がしてェ」


はっきりとした声音で問いかけるも、返されるのはニタリとした表情と沈黙。
あっさりと答えるとは思って居なかったが、気が長い方ではない高杉はすぐに脳内をイラつかせる。

それでもグッと堪えて返答を待つと、予想外にも銀色は歩を進めてきた。
咄嗟に身構えるが、その足取りはまるで地に足が着いていないのではと言う程静かで、ゆっくりと近づいてくる。

やがて高杉の目の前まで辿りつくと、白く細い指で高杉の左目を覆う眼帯を優しくなぞった。








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