緋色の鎖
□第六章
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「・・・・銀時」
女物の着物を纏った隻眼の男、高杉晋助は、一瞬土方に眼を向けてから直ぐにうずくまって自分の名前を呼ぶその銀色の元へと歩み寄る。
「殺さないで殺さないで!!おれは鬼じゃない、鬼じゃない!!殺さないで!!!」
「誰も殺しゃしねぇ」
「嫌だ嫌だぁあああ!!晋助、晋助・・・っ!!!」
「・・・銀時。俺はちゃんと居る。・・・だから落ち着け」
強く抱きこんでその頭を撫でる。
まるで過去に何度もこのような経験をしているかのように。
幼児退行したかのように泣き叫ぶ銀時を、高杉は手馴れた様子であやす。
それをただ、唇を噛み締めて土方は見つめていた。
仮にも土方にとって銀時は自分の恋人だ。
他の男の名を呼び、他の男に抱きこまれあやされているのを見て何も思わないはずは無い。
しかし。
銀時をこのような状態にしたのは自分だという事も分かっていた。
だからこそ、口出し等できるハズも無かった。
「銀時、おめぇは人間だ。鬼なんかじゃねぇ」
「でも殺した、沢山殺した、殺した・・・!!!!」
「違う、護ったんだよおめぇは」
「!!・・・晋・・・助・・・」
「銀時・・・だから、俺から離れるなっつったんだ」
「・・・っ・・・」
高杉の呟きが聞こえたのか聞こえなかったのか。
銀時の瞳は更なる涙で大きく揺れて。
震えるまぶたがゆっくり閉じられると、白い頬を一際大きな涙の雫が流れ落ちた。
と同時に銀時の身体からは力が抜ける。
すぐさま高杉が支えてその銀色の頭を一撫ですると、そのまま抱き上げた。