緋色の鎖

□第三章
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最近、朝起きると身体が重いことがある。
今日もそうだ。
特に腕と足が痛い。
酷い筋肉痛のような痛みだ。
寝返りを打つたびに痛みが走って、否応にも眼は覚めてしまう。
しかし身体は反対に睡眠を欲しているようで、原因は分からないがなんとも不快な朝だという事だけは確かだった。

無理にでも眼を閉じていたが、一度覚醒した脳内はなかなか睡眠へと帰ってくれない。
致し方なく瞼を開けると、暫くの間紅い瞳はただ天井を見詰めていた。


いつまでもこうしていても仕方が無い。


小さく溜息をついて、軋む体を起こす。
そこまで来て、銀時はようやく自分の身の異常に気付いた。


「・・・っ!?」


布団の上で上半身を起こした銀時は、自分の身体を視界に入れて硬直した。

右手は固まった血液と思われる赤で染め上げられ、黒いインナーからも分かるほど全体に染みが広がっていた。



まるで返り血でも浴びたかのように。



そこまで来てようやく理解する。
この身体の痛み。

これは昔、よく体験していたものだ。
戦時中、大量の天人を斬り殺したとき。
その翌日は体中の筋肉が軋んで、血肉を斬り飛ばす事への身体的疲労の大きさを実感せざるおえなかった。

それが、今自分の身体に再び起きている。
もう二度と味わうことが無いと思っていたこの痛みが、再び己の身体を蝕んでいるのだ。


何故?


記憶に無い。
そもそもこんな状態になるようなことを、自分がするはずが無い。
銀時の脳内はみるみるうちに混乱していき、事態を把握することは一層困難になる。
そこで、そんな銀時を現実へ呼び戻す一声は放たれた。











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