緋色の鎖
□第二章
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「どういうことだそいつは」
副長室に籠る煙。
それは絶えずその部屋の主の口から生み出されては蔓延し、換気がされていない室内は既に白い靄で満たされている。
「だから、また奴が出たんでさァ」
この上ないほど顔を煙たそうにしかめている沖田は、その鼻を指でつまんでもう片方の手をパタパタと扇がせている。
しかしまた新たな煙草に火をつけた土方は、怒りを滲ませた瞳を向けて口を開いた。
「この時間帯に賊が出ることは予想されてたろうが。それが何で食い止められねぇんだよ」
「お言葉ですが、さっきまで旦那とデートして鼻の下伸ばしてた野郎に言われたくありやせんねィ」
まるで汚いものでも見るかのような瞳で見てくる沖田に、土方は動揺を隠しきれない顔で眼を剥いた。
「な、なんだとコラ!伸ばしてねぇんだよんなもん!!」
「とりあえず今はガイシャの検死と現場捜査中なんで、アンタも早く来てくだせェ」
「ォイコラ聞け!!・・・チッ」
心底顔を不快そうに歪ませて、沖田はスタスタと部屋を出て行く。
土方は頭をゴシゴシと掻いてから、口に銜えていた煙草をねじり消して部屋を出た。