緋色の鎖
□第二章
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かぶき町にある人気の無い一角。
歓楽街はおろか住宅すら無いこの道が、今宵に限っては煌々と明かりがともされ、黒服の男達が忙しなく動き回っていた。
その中央に広がる紅い血飛沫の跡。
それを見下ろすようにして、今しがた現場に到着した沖田と土方はそこに立っていた。
「ガイシャは此処に仰向けで倒れていやした。・・・ま、仰向けと言えるかは分かりやせんがねィ」
「・・・?どういう意味だ」
報告の真意を掴む事が出来ず、眼を細めて詳細を促す。
しかし表情を一切変える事無く続けられたその言葉は、誰しもが眼を見張るものだった。
「首が数メートル先まで吹っ飛んでいたんでさァ。そうそう、あの辺に」
沖田が指差した方に眼を向ければ、そちらにも紅い水溜りを確認する事が出来た。
いつものようにぼんやりとした表情の沖田に比べ、土方の顔はみるみるうちに不快そうに歪んでいく。
此処最近、真撰組が最重要事件として取り扱っている案件。
それがこの「かぶき町連続殺傷事件」だ。
夕飯時から夜明け前まで時間的には幅広いが、現段階では決まって夜に発生している。
今回の事件を含めて過去に五件。
これ以上被害が拡大すれば、真撰組の面目も含めて非常に面倒なことになる。
しかし、通常であればこのような事件は辻斬り事件として町の警察の仕事となるはず。
それが特殊警察である真撰組へと回って来ている理由は唯一つ。
その犯行手口があまりにも残酷で、一日に複数件発生する場合もある事から、テロの可能性もあると理由をつけて厄介事を押し付けられたのだ。
土方の機嫌がすこぶる悪い理由は、それが大半の理由を占めていると言っても過言ではないだろう。